フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第5,6話

 第3のライダーギルスが登場する。それに加えアンノウンの殺害対象の選別の有無、氷川の過去などこれからのアギトを牽引していくための要素が示唆された。前回までがクウガとの差異の説明段階なら、ここからアギトという物語のエンジンをかけていくところだ。

 今回オーパーツから赤ん坊が生まれ出た後は、魂が抜けたようになってしまう三雲。これは彼女なりに人体錬成という禁忌の領域に踏み込んでしまったことへの良心の呵責があったのではないだろうか?本人もまさかとは思っていたが…と言いたところだろう。オーパーツの残骸を運びだす職員の中に迷彩服の人たちが見えたが自衛隊の者だろうか?G4を作り出すための足掛かりはこの頃からあったと想像すると楽しい。

 また、今回でG3チーム内でのアギトの正体についての会話があったが、ここでのニュアンスは「アギトとはどこから来た生物なのか?アンノウンとどう違うのか?」程度であって、よもや人間が瞬時に変身しているとは露とも思っていないようだ。

 この回にて、互いの正体を認識せず、翔一、氷川、葦原が一堂に会する。このすれ違いのドラマにやきもきするのも醍醐味だろう。

 

翔一

 真由美に対してデレデレするなど人並みな所を見せる、こういうところが翔一が成人ではなく仙人たる所以だろう。ただそればかりでなく超然としたところも見せる。真魚と真由美に「会いたくなったら会いに行けばいい」という場面だ。言うは易しだが、多くの人は時間だとか旅費だとか様々な制約を思い浮かべ口にはしない。しかし、それでも翔一は口にする。あるがままの世界と自分を受け入れているのと同様に、何かをしたくなったら即実行すればいいのだという。この非凡なところが物語の主人公を担う器なのだろう。

 

今回真魚は真由美にデレデレする翔一に「別にお前が好きなわけではないが、みっともないので注意しているだけ」という。これは本心だろう。真魚と翔一の関係は彼がアギトであることを一方的に握っている関係だ。秘密を共有する悪友のようでもある。それが自分以外の存在に気を取られ右往左往するのが気に食わない、そんな繊細な距離感もこの二人の面白い所だ。

 前回の続きから、勝手に瓶を割って硬貨を使用した太一にお灸をすえる美杉教授。しかし硬貨が購入に使用できたということは本物(少なくともそう思わせるくらいには精巧で瓶に入れるマジック用ギミックなどない)である。これを教授が見落とすとは考えにくい。その後他の点を検証しようともしないあたり、彼にも思う所があるのだろうか。

 

氷川

 北條の主観を通してだが氷川がG3装着者になった経緯が語られる。それはあかつき号と呼ばれる船の海難事故からたった一人で乗客を救ったのだとか。何故海上保安庁ではなく一介の刑事の氷川が助けに行かねばならなかったのか?北條の言う組織の汚点があったのならば氷川はそれに触れてしまったために、上層部が彼を監視するために東京へ呼び寄せたのか。実直さを絵にかいたような氷川だが、ここでまるで翔一のような過去の不明瞭さを示し始めた。メインライダー3人のうち全員が重苦しい部分を持つ、まさにサスペンスのようだ。

 氷川と言えば無骨さだがこの回で真由美の父の超能力者の可能性を探るなど柔軟な思考を見せる。可能性が有るならばそれが超能力という突飛な存在であっても視野に入れる、刑事としての確かな能力を見せる。

 

一連の戦いからアギトを味方だと言い切る小沢。いつもの通り御室は呆れたような反応をするが、意見を改めることにも臆さず他者の目も気にしない彼女のスタンスはやはり気持ちいい。彼女の近くで仕事をする人間は疲れそうだが。

 氷川を装着員として頼りないと言う北條。視聴者の目線からすれば、氷川の問題というよりG3側のパワーと格闘能力不足であるのだが、その戦闘場面を彼は見ておらずしかもG3を乗っ取りたいわけで同システムを悪くは言いたくないのだろう。

 

葦原

 葦原の相談の要請に電話口では応じるものの、居留守を使うコーチ。これは単純な拒絶より気が滅入ると思うのだがそれを責めずに黙って去る葦原。やはり彼は己の中で他人との明確な一線がありそれを遵守する性格のようだ。単純に呆れただけかもしれないが。そんな忍耐強い彼だがそれでも己に起きた常識外の変化から過去の人間関係で気を紛らわそうとするのは責められないところだろう。

 真由美に再開したときは一度は謝罪して去ろうとする辺り、人に迷惑を掛けたくないという思いとそれでも人並みに悩んでしまう思いのせめぎ合いが見て取れる。最終的に拒絶されるものの、それでも見返りを求めずに戦えるその精神力は絶望的な事故から立ち上がったことからも繋がっている。

 最終的に葦原を拒絶する真由美。真魚と翔一の関係と対照的だが、真由美は真魚と違って普通の人間である故にやむを得ない面もあるのではないか。真魚と翔一は異能という同族とも言え、彼女にとって翔一の秘密は安心感をもたらすこともできるが、真由美は言葉通り「葦原とは違う」のである。それに最後には謝罪の言葉を絞り出している辺り彼女を責めきれない。真由美の「普通に生きて行きたい」という言葉、異形になった後でさえも葦原が「生きる目的・打ちこむ目標を求めるタイプ」であることと対照的ではないだろうか。

 この回、翔一たちとは大した関係ではないと葦原に誤解を解こうとする真由美や、寄りを戻しかけたとはいえいきなり彼女の家によるほど「図々しくはなれない」と発する葦原など微妙な距離感を示す台詞の応酬が多く、人間ドラマとして見ごたえある描写が多い。

 

 

アギト・アンノウン

 この回にて少年がアンノウンの上位に立っていることと、殺害方法から無差別に人を襲っているわけでも単なる嗜好でターゲットを決めているわけでもないことが明らかとなった。三雲を無断で殺害して自害させられた女スネークロードは勿論、後者に関しては男スネークロードの能力の使用方法にある。1話でジャガーロードが光の輪を出し能力で氷川を殺害しかけたものの取りやめていたのに対し、今回スネークロードは葦原に対し迷うことなくその能力を披露していた。また、弁髪を切り落とされた女スネークロードは少年に三雲殺害を制止されたにもかかわらず実行し粛清された。やはりアンノウンには明確な選別基準があるのだ。

 さて、今回お披露目となったギルス。その戦闘力はアギトに比肩しうるものだった。これまでアンノウンはおよそ感情と言う物を見せず、アギトに対する敵愾心か謎の少年に対する畏敬のようなものくらいでおよそ戦闘中でも感情は見せなかった。そのアンノウンが恐れをなし逃走を図った辺り、ギルスの格闘能力が伺える。アンノウンの武器を破壊したり特撮面でも見せ場が多い。

 アギトでは刃物攻撃は必殺であると概要感想で触れたが、この回では例外として即死に至らないかわりに、独自のダメージ表現がなされている。ギルスクロウに切り裂かれたアンノウンのわき腹から光が漏れている描写と、アギトストームフォームの薙刀に女スネークロードの弁髪が切り落とされている描写だ。いずれも単なる打撃ダメージのようなもので終わらせない演出面の妙味だ。また前者の描写からも「霊石以外は人間とほぼ同じ」といわれていたグロンギとは明確に異なるのが視覚的に見て取れる。

 

 放送時、ギルスの変身セットは発売時期が登場から遅れておりTVCMも作られなかったが、これは人気を受けた急造品であるためだという噂が流れていた。実際ギルスの変身演出は変身後の姿に幻想的に切り替わると言う物であり、変身時にベルトだけが浮かび上がるとか何か操作すると言う物は見られない。今でいう販促要素が薄いためそんなうわさが流れるのも納得だ。

 

 今回ラストにて、真由美は実家に帰って行った。アンノウンから逃れるのにそれで十分なのかという疑問もあるが、そもそも逃げる為ではなく実家の母を一人にしないためと明言されているのでその理由が主だろう。

 その上でアンノウンごとに対象が異なる理由付けを想像してみると

・アンノウンごとに感知器官が異なる(女スネークロードの髪や、後の回で出る蜂の触角)ので見つける対象に差異が出る。

・アンノウンは謎の少年の周囲で動き始めるので活動の出発点が東京周辺。そして被害を出すうちにライダーに見つかって倒されるので東京外に出る前に被害は止む。

 といった辺りではないだろうか。

 

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仮面ライダーアギト感想:第3,4話

前回までが、クウガとの差異と世界観の説明に尺を割いていたため、主役である翔一が戦う理由などはこの回で描写されることになる。今の個々の世界観が確立された平成ライダー枠からは少し外れた構成だがこれも黎明期ゆえだろう。

 

 

翔一

 どうやらG3を襲ったのは自分の意志ではなくアギトの力が制御しきれなかった模様。彼はアギトである・アギトになることは今回が初めてではない様子だが、少なくとも戦うのはアンノウンが活動し始めてからそれに呼応したここ最近が初めてであるのが見て取れる。したがってアギトとしての達人じみた動きは長年の戦闘経験によって完成したといったものではなく、アギトの力によるもの、もしくは翔一の天性のセンスということになる。そのため暴走してしまうことは存外自然…とまではいかないがやむを得ないことなのだろう。

 失意の彼が吐露した「俺らしいってなんだよ」。彼は記憶喪失であることを普段は気にも留めていないがさすがに異形に変異したことに当たっては、自分が何者なのか気になるようだ。ここで注目したいのが視聴者にとっても翔一がどんな奴なのかまだ分かっていないということだ。例えば、番組終盤に失意のヒーローがそのような台詞を吐けばそのキャラの人となりを知る視聴者は応援したくなる、あるいはイラつくといった感情を抱くだろう。しかし現状の翔一は何かに対する拘りを見せずフワフワしている。彼らしいがなんなのか知りたいのは我々なのである。

 この作品を担当する白倉Pが著書においてヒーローの特徴の一つに「出自不明の来訪者」が示されている。その点で行くと翔一はまさにヒーローだ。桃に包まれた桃太郎のごとく水辺に流れ着き、彼自身が己のことを知らないため誰も出自を調べられない。しかもオーパーツも同じ来歴であるため、彼とオーパーツの関連性も匂わせられている。

 この2話で真魚に正体を知られ受け入れられた翔一。異形を恐れず打ち解ける様は美しいが、実は真魚も又異形とまではいかずとも異能であるのだ。身寄りがなく己の行く末への不安、そんな感情を抱く真魚が図らずも同じく異能の同族を見つけた安心感もあるのではないだろうか。また、この二人は秘密を共有するわけだが、真魚が超能力者であることを翔一は知らない。秘密の共有というより一方的に握られているのだ。

 

氷川

 この回で氷川は翔一とつながりを持つことになる。しかし変身後の姿ではお互いの素性を知らない。しかもこの時点ではアギトはG3チームには謎の生物としか思われていない。「正体がある」という発想すらないのだが、ここからどうたどり着いていくかに本作の醍醐味がある。実直な面が目立つ彼だが、あまりの翔一の昼行燈ぶりに彼を軽んじる心情を抱いてしまっているのが見て取れる。小沢は勿論北條にもかしこまった態度を取る氷川ですら「なんかこいつ変だ」と思わせる翔一のマイペースぶりがここでも際立ち、視聴者にも「やっぱり翔一は変な奴なんだ」と確信させる形となっている。

 またG3のストーリーラインは基本的にチームで動くためメンバーや関係者の人格も順次描写されている。北條はG3チームに対しあれやこれやと画策する敵対心を持つものの、上層部に対し情報の隠ぺいなどを行うことは無くあくまで果たすべきことは果たした上でG3チームに挑んでくる。良い奴ではないが単なる嫌な奴でもないことが見て取れる。

 同様に小沢も、このヒーローやロボットものによくある発明博士でおわらず、豪快な性格を見せる。「アギトもアンノウンも八つ裂きにしてやれ」「気に食うか食わないかで物事を決めればいい」と物騒な物言いも多いが、他人を後ろ盾や正当性に使わず己の意志で物事を決め、それを臆することなく前面に出す姿勢は見ていて気持ちがいい。

 

葦原

 この時点ではまだ呻いているだけ。しかし、アギトとアンノウンの戦いに並行して病院から抜け出すため、実はグロンギにも人間態があったようにアンノウンの人間態なのではないか?というミスリードを誘っている。

 彼の退部を認めず家まで尋ねるコーチ。その関係性はまさに悩める仮面ライダーおやっさんの関係だ。葦原の体に起きた異変を目撃するコーチ。昭和ライダーおやっさんのようなよき後見人となるのか!?

 まだ葦原の性格などはあまり描写されていないが、体に走る激痛などを(人に見せられるものでないとはいえ)自分一人になって我慢する辺り、忍耐強いが他者との距離では一線引くところがある。他人の居場所は守るが己の居場所はなんだがつかみどころのない、不定形な翔一と対照的だ。

 

アギトとアンノウン

 今回は早くもアギトの苦戦が見られるわけだが、よく見るとパワーバランスに細やかな気配りがされている。今回登場したトータスロードは甲羅の硬さに目が行きがちだが、前回のジャガーがバラバラに戦っていたのに対し連携してアギトに対処している。よって、甲羅+連携でアギトの優位に立っているわけで単体ならばアギトが優勢になって勝利を得る、1対1ならば依然アギトは強いという形が見えてくるわけである。

 またG3もここで単独撃破を上げている。放送時はなんだか頼りない印象を受けたノーマルG3だが、見てみると自分がダメージを受けながらも相手にもやり返す、肉を切らせて骨を断つ戦法で有効打を与えていることが見て取れる。なのでやられながらも何らかの仕事はこなしていると言ったところ。しかしまあこの回、小沢さんの「根性見せなさい」はカッコいい啖呵だが、無策で無茶を言う…とも思う場面であった。

 

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仮面ライダーアギト感想:第1・2話

ちょうど公式配信が始まったので2話単位で書いて行こうと思います。

 

概要

 この2回を観ていると他作品同様の「仮面ライダーアギト」の導入に加えて、前作クウガの続編ではないことのアピールの二つが行われている。その2つの仕事に追われているため、本作の持ち味たる人物描写や掘り下げという点についてはやや薄味な点もあるが同時にこの作品ならではの部分も随所にちりばめられている。例えば、翔一と葦原の変調をリンクさせたうえでアギトが変身する瞬間は映さず、誰がアギトになっているかわからないような演出がなされている(まあ放送前番宣なども有ったので完全な隠ぺいは出来ないが、それでも効果はある)。また、だからこそG3の視点に共感し、仮面ライダーアギトではなく「謎の生物」が現れ別の怪物(アンノウン)を撃破したという状況に没入することができる。

 また、複数ライダーはこの作品によって確立されたところが大きいが、後続の作品のように翔一君のところに他のサブライダーが挑戦しに来るのではなく、3人がそれぞれの舞台で話を進め、時に接近し時に交わるスタイルを取っていくのが大きな特徴だろう。

 

翔一

前作の五代が劇的な登場をしたのと異なり、ガス欠になったバイクを引っ張ってくるだけの翔一。この2話で彼からはこだわりの無さ、ひいては彼の内面の見え無さが見て取れる。彼は記憶喪失でも別に困らないと言う。こんなことを口走るあたり彼が尋常な精神ではないことがわかり、物語の主人公たる資質が持っていることが見て取れる。

 同時に彼がずけずけと物を言ったり人を困惑させる描写が随所に挟まれており、翔一は仙人や食わせ物であっても成人ではないことがわかる描写が絶妙だ。

 また、基本的に翔一は極めてマイペースだがこの2話で唯一真魚にだけはペースを崩されている。そしてそのずけずけと話す真魚も翔一の不用意な発言に黙り込んでしまう。この繊細なバランス感覚がどちらか一方を完全な主導にしない形になっている。

 ここで真魚の超能力が披露される。前作のクウガが怪人の存在以外は徹底して現実の世界に近い世界観が描かれていたのに対し、アギトでは全く異なる世界が作られている。こういったことからも前作の要素を引き継いで入るが物語として語ることが違ってくることを視聴者に分かりやすく伝えている。

 

氷川

 物語の一角を担う彼であるが、この2回にわたってはそれに加え前作クウガとの違いを強調する役回りを追っている。一枚岩ではない警察の面々。そして、G3チームという半ば独立した部隊の一員として動く氷川に対し、組織人として相対する北條など警察という組織一つとってもクウガと違う作品であることを表現している。こういった点から、G3の設計コンセプトなど前作から引き継ぐ要素がありながらも肌感覚として前作との違いを視聴者に伝えている。

 もっともそれに終わらず、警察としての強い使命感を持つこと、それが行き過ぎて遺族を泣かせてしまう場面があるなど彼の武骨漢である一面はこの2回で既に表現されている。

 ライバルたる北條だが、この2話で謎の怪物を倒したにもかかわらず同じ殺人が起きる=一体一体異なる殺人をしていたグロンギとは異なることを踏まえた推理を披露する。残念ながらアンノウンという新たな驚異が答えであったため彼の「氷川のでっちあげ」説は外れることになるが、彼の観察力は確かなこと・今作の怪人はグロンギと異なることを強調している。

 

葦原

 翔一に比べると人並み外れた異質な部分は見られないし、氷川のように事件の最前線に立つ人物でもない。彼はまだ本筋には絡んでいないが、見ていて特徴的なのが水泳選手(スポーツマン)、親身になってくれるコーチ(おやっさん)がいるという点だ。

  アギト、G3、ギルスはそれぞれ現在、未来、過去を表しているとされているが、そこへ行くとギルスの導入は典型的な昭和ライダー像と言える。

 しかしまあギルスに覚醒するだけでも不運なのに、いきなり覚醒するのではなくトラック事故にあってからという念入りな災難にはなんだか笑ってしまう。

 

アギト&アンノウン

 今作の敵となるアンノウンだがグロンギとはデザインも行動も大きく異なる。

 まず見た目としてはグロンギが鋭い目でありながら能面のような不気味さを持っているのに対し、アンノウンは爛々とし眼光と大きく開いた口というかなり目立つ目鼻をしている。にも関わらずアンノウンは行動や仕草では感情が感じられない。常に背筋を伸ばし厳かな雰囲気を醸し出し、人間を殺害してもなんのリアクションも起こさない。唯一感情を見せたのがアギトに対する敵意くらいだ。明らかに殺しは手段にすぎないことがわかる。

 しかも氷川を襲った際に光の輪を顕現させた(他の被害者と同様の殺害を行うことができた)にも関わらずやめてしまう。そのままその力で殺してしまうのにはなにか不都合があったのだろうか?

 

 G3とアギトのお披露目となったわけだが、G3は前半の性能試験で鉄球を受け止めるなどその身体能力・頑健性も十分に披露しているため、やられる場面が目立つが弱いというよりはアンノウンが規格外だと実感できる。

 さらにその後現れたアギトが素手でアンノウンを圧倒するところを見てG3が困惑する(この時その前に命中させたが仕留められなかった重火器に目をやる仕草が良い)ところに、視聴者の目線と一致し感情移入を誘う。

 アギトはその見た目から文明感を感じさせないが角を開く音は抜刀音だし、動きは武道の摺り足のようであるためどことなく和風を感じる。

 

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仮面ライダー555感想:第3話

全体

 メイン人物が登場していく回。お互いの力関係しか頭にない巧と真理と違い、一見すると人助けに熱心な啓太郎。しかし、前述のとおり我が道を行く二人さえも困惑させる勢いで一人勝手に悲観的になったり小間使いになる彼。この段階では啓太郎に対してもどう見ても共感も感情移入もへったくれもない。仮面ライダーの陣営の誰にも感情移入できない。これ当時としてもかなり挑戦的な進行だったんじゃないだろうか。

 

  そんな啓太郎と別の繋がりを持つのが長田結花。今でこそいたって普通の繋がりだが、当時のメル友という新たな関係性を啓太郎と構築している。狂人(?)の啓太郎があけすけに(主観の入った)現状を語り、普通人の長田が虚飾の混じった物語を語る。今思えば、この555というドラマにおける変身前後の認識の錯綜したペルソナのドラマはこの時点で片鱗を見せている。真実を語っている啓太郎、かたや虚像を語る長田、そしてそれを互いに真実だと思っている認識のずれ。今後の555を象徴しているのは巧でも木場でもなくこの二人だったのだ。長田について、彼女の境遇から決して幸福な生活で無かったことはわかる。しかしそんな彼女だが自殺をしたわけではなく、まだ生きようとしていたのだ。そんな彼女が偶発的にオルフェノクに覚醒したのだとするならば、今後の行動は想像に難くない。

 

ここで、木場について。千恵が灰化した描写と他のオルフェノクも同様に人を灰化させた描写からオルフェノクという種族における共通の能力なのだろう。死者から蘇ったのがオルフェノクという存在ならば、あとは追加された余生を生きねばならないだけなのだろうか?それならば彼らが人を襲うのは一時の鬱憤晴らしにすぎないのだろうか?そういった疑問が牽引力として残されていく。しかし一方で、ここまで見るとオルフェノクが恨みの感情や衝動で無く故意に人を襲うのはベルトの奪還の場合だけなのだ。余生を過ごすだけならわざわざ危険をおかす必要はないのに?そういった疑問が浮かんでくる。オルフェノクに殺された人間とファイズに殺されたオルフェノク、どちらも死の間際に灰化することが、どんな存在がどんな命を奪っているのか畢竟同じことだとささやいているように見える。

 また、”社長”から王の眠りは深いというメッセージを受け取る。この段階で既にオルフェノクの王についての布石は置かれていたのだ。このメッセージが王の眠りを起こせなのかそのまま眠らせておけなのか?その点については真理が東京へ面会に向かっている途中だった(東京に居て人に会う余裕があったはず)にもかかわらず人前に出られない様子からあわただしい動きがあったのだろう。したがって、この時点では(少なくとも内心では)王の眠りを妨げる方針に転換しており、追手から逃走を始める直前~最中位だったのではと思われる(スマートレディもこの時点では本心を告げられておらず普通に業務として木場に伝えたのでは?)。

 

 

 

ファイズ&オルフェノク

 ファイズとの交戦描写が重ねられてきたが、いずれも前述のとおりベルトを奪うためである。木場パートで描かれた「生前の恨みによる報復や鬱憤」とは根本的に異なる。そのため、巧の言う「ベルトなど渡してしまえ」という提言に一定の説得力を感じるわけだが、同時に無関係な人を殺害する描写からそうもいかないことも実感する。

 

今回フォンブラスターを使用するファイズ。前作の龍騎の飛び道具(ストライクベント)と比較すると、威力にはおとるが小回りは聞きそうな演出から多人数ライダーではなく、ファイズが看板を背負う主役ライダーとしての独立性・万能性が高いことが伺える。それをてこずりながらも状況にあった武器選択を見せていく巧、どう見ても荒事になれている。

 

 

これ書いてて自分の中でもスタイルが確立できてないんだが、当時のリアルタイムの視点から書こうとするんだけどどうしても全話見たあとの視点や感想が入ってきてしまう。

 

 

仮面ライダー555感想:第2話

全体

 各キャラの状況やスタンスがより説明されている回。今後の布石となるべき行動の方向性が一応見せられているわけだが興味深いのは強力な牽引役を置いていないところだ。仮面ライダー、メイン怪人共に初変身を終えたわけだがどちらも己の(視聴者が共通認識として抱くところの)使命に無関心と言ったところ。おおよそ話を牽引するには不便であり、そんな二人をメインに据えているのもこの作品の挑戦的な所ではないだろうか。

 

人物

 自分のことは頑なに開示しない巧。彼の名前が判別するのも自己紹介や他者から呼ばれるものではなく、紛失届へのサインというもの。これまで性格や価値観に違いはあれみな人当たりがよい主人公が続いただけに、名前を知るのも一苦労な巧は本当に異質だ。どんどん自分を語る真理とのギャップでより明確になっている。また、真理が巧を積極的に引っ張りまわすためにあれこれ喋るので、結果的に彼女の情報は無理なく開示されている。これにより、ベルトと父親の関係から彼女もまたなにか秘密を持つことが明らかとなった。ただ巧もただつんけんしているだけではなく、真理とのやりとりの端々から根っこのお人よしさを随所で見せているから本当にこの回は人物の掘り下げをメインにしているといえる。

 どこかのんきな九州組と対照的に衝動的な殺人に明らかな後悔を見せる木場。しかし同時に、そのまま力に溺れないだけの良識がある。それでもやっぱり2話のラストに知恵を手にかけてしまう。衝動的な殺人とそれへの自戒。人間性が持つ多面性を彼も持っていることを見せると同時に、怪人になったからと言って即座に猛獣のようになるわけではないことを見せている。

 木場を救う謎の存在、スマートレディ。彼女の怪しさが何を表現しているかというと、その背後にあるスマートブレインの怪しさに直結しているのだ。どういうことかというと、木場が眠っていた部屋のテレビでオートバジンが映ることから555ギアとスマートブレイン社のつながりを感じさせる場面を見てほしい。しかし、ここでメインキャラと接触するスマートレディが怪しいため、この会社をクウガの警察やアギトのG3チームのような明確な人類の味方だとは期待できなくなる。つまり、スマートレディの怪しさとはすなわち背後のスマートブレインの怪しさを表現するためのものであり、彼女の正体が何オルフェノクだとか実はアンドロイドだとかは、別に重要ではないのである。

 刑事のコンビ。知恵を刺激しないように言い回しを工夫するベテランと思ったことを口にしてしまい彼女に逃げられてしまう若手。ここで警察としての手腕の差異を描いているのが上手い。一方で、一般市民に過ぎない木場を頼る知恵。気が動転していて判断ができないのか、よほど木場を心の底では信頼していたのか。まあ前者なのだが、この回でさほどよろしくない性根であることが明らかになる。これは1話で一彰の悪意とセットに出てくるのではなく、この回に時間差攻撃で出てくることで木場の辛さがより際立って見える。しかも偶然にも木場にとっては事実なのだから、とっさに強く否定できないのがこれまた間の悪いことだ。そういえば木場が自転車の幻影を追いかけるシーンは田崎監督の発案らしい。

 

 

ファイズオルフェノク

 第1話だけだとどういう存在かわからなかったオルフェノクが今回で人間が変異した存在だということが明らかになる。1話感想の繰り返しになるが、現代人が変貌するという怪人は(昭和ライダーから見れば伝統であるにもかかわらず)、平成ライダーでは様々な種族が続いただけに改めて新鮮である。今回の中でを2回見せることで”灰化”をゲスト怪人固有ではなく種族共通の力だと印象付けている。この灰化能力のせいで人は跡形もなく消え、木場の殺人を図らずも隠蔽してくれることに。人間側にいつまでもその存在が認知されない理由付けにもなる上手い演出だと思う。

 オルフェノクが長台詞を喋るときは影に人間態が映り喋っている。これは初期平成ライダーが試行錯誤していた芝居の説得力の一環だろう。口が開閉する着ぐるみも多い戦隊怪人に比べ、ライダー怪人のマスクは一体成型であり大きくは感情を表現できない(グロンギやアンノウンは一部口が開閉したりギニョールで顔の動きを表現していたのだがやはり撮影の負担が大きかったのだろうか)。そのようなマスクで感情の有る長台詞を喋ることを初期平成ライダーは避けており、謎言語により理解よりも断絶感を一層与えるグロンギ、基本的にうめき声しか出さないアンノウンとミラーモンスターといった工夫がなされている。現代人が変貌する(感情のある芝居は避けられない)オルフェノクではどうか?その演出があの影だ。命のやり取りをしている間でもふと出てくる人間性、そういったことを表現しているようでもあり、まさにファイズが奪おうとしているのはどのような命なのかを克明に見せる。こういう演出はやはり手間がかかるのか後続作品では鉄面皮の怪人がそのまま普通にしゃべるようになっていくのだが、ワームやファンガイアで顔の幻影が浮かび上がる演出などここぞという場面で使われるなど部分的に残っていくこととなる。

 オルフェノクと同様にファイズの力でも繰り返しの手法が使われている。冒頭でミドルキックでオコゼを倒す。同様にゾウにも同じキックを出すのだが、こちらは相手が硬くて通用しない。ここで必殺キックが必要だとお披露目される流れになるわけだ。しかし足に狙撃スコープをつけるという構造をここまでかっこよく魅せるスタッフの手腕には舌を巻く。ポイントマーカーを撃ちこむという発想が凄い。自分だったら「足にスコープつけてどうすんじゃ…覗き込みながらキックすりゃええんか?」ってなる

 

前回、今回とオルフェノクを倒した直後のリアクションが描かれない巧。変身解除を映さないことで、怪人を倒してどういう感情を抱いているのか視聴者に見せない。描写が巧みだ。巧だけに。

 

 

仮面ライダーギルス(マツイ製作所)

マツイ製作所さんより2019年のワンダーフェスティバルで販売されていたギルスの

フィギュアです。

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ギルスの体格・質感が見事に表現された一品

 

       

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複眼はクリアーパーツが使用されており透明感があります

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大きさはアーツの1.5倍程。ガレキの塗装は初めてでしたが予想以上に楽しかったです。

変身直後の瑞々しい質感と甲虫的な質感の中間をイメージして塗装しました。

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            画像加工で複眼を光らせてみたり

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         以前プレバンで買ったイコンを背景にしてみたり

 

 

そういえばシリーズ名はともかく個々のライダーを英語表記するときって、

Kamen rider GillsなのかMasked rider Gillsなのかどちらが普遍的なのだろうか

 

仮面ライダー555感想:第1話

ブログを放置するのも何なので1~数話単位で感想を書いて行こうと思う。当然何度も視聴した作品であるが、できればフラットに、リアルタイム時に抱いた思いや当時の環境も思い出して交えていきたいと思う。

 

全体

 ストーリーラインが複数あり。どれが主人公なのか敵なのかそういったものが意図的に攪乱されている。555放送前の番宣に「敵もまた選ばれた人間!」というフレーズがあった記憶があるが、その文脈で言うならば超常的な力に選ばれたのは木場だ。まだG3の記憶も新しかった時代、ファイズというメカの鎧に身を纏った方がそういった力を持たない者の装備に思える。そうこうしてるうちにヒロインの追手としか思えない男がまさか最後に変身する。それ故にこの1話はまさに混沌としている。我々の理解を助ける(悪く言うと脳を甘やかす)序列や属性付けがされていないのだ。

 視聴者がもつそういった様々な思い込み・レッテルなどどこ吹く風でそこに在る人物たちの動き。まさに製作のキャッチコピーにあったと言われる「人が生きている。ただそれだけ」である

 ファイズの顔ってΦなんだけどこれって〇に線を引いて境界を作っているようにも見える。こちら側と向こう側、私たちとあいつら、暗闇に赤い線を引く演出といいファイズとはこの境界線上を歩く者なのだろう。

 

人物

明確に人柄が描写されているのは真理と木場。見返すと意外のなのが思った以上の真理の人の良さ。しつこく付きまとってくる男たちにも写真を撮ってやったり戻ってこなければその友人たち以上に心配している。この後出てくる様々なキャラクターたちの濃さに相対的に常識人枠に見えるところはあるものの、彼女もまたこの戦いを生き抜く強さは持っているのだ。

 木場は平時であれば人は責めないし今回も最後の最後で爆発するまでは、状況が状況であるにもかかわらず我慢強く行動している。それ故に彼の悲劇と超常の力を爆発させてしまったやりきれなさが際立つ。

 巧はこの1話だけだとコミュニケーションを拒む者として映る。これまでの作品は1話で名前が台詞上で発されて視聴者に知らしめられていたがそれもなし。定食屋で壁のお品書きを指さすことで注文するのは最たるものだ。

 

 

オルフェノク

 この段階では目的がかなり不明確に描かれている。勿論他の作品もほとんどがそうなのであるが、この作品はひときわである。怪人が3体も登場するわけであるが、行動、そこからうかがい知れる知性・人格・目的に共通項が見出し辛い演出がされている。そもそも、平成ライダーが20作以上続いた現在となっては現代人と同じ精神・言語能力を持つ怪人は当たり前となったが、555放送当時は、謎言語を操るグロンギ人間性を見いだせないアンノウン、完全な野生生物のそれのミラーモンスターと様々な怪人が続いた時期である。オルフェノクがそのまま現代人と同様のメンタリティを有する怪人か、素直に受け止めるのは判断に困る時期でもあったのだ。

 その中でも3体中2体がベルトに関わる行動を見せている。ここでベルトへの注目を集めている。単なる人間の戦力を奪うためか、はたまた更なる事情があるのか、対怪人戦力以上の重要性を想起させる。また、怪人の人格に対しても木場がオルフェノク態への変身と平行してオコゼオルフェノクの変身も見せている。ここでオルフェノクが人格を有することを倍増しで印象付けている。また、人と意思疎通不可能な怪物ではなく主要キャラクターとして描かれていくことを予感させている。