フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:第2話

全体

 各キャラの状況やスタンスがより説明されている回。今後の布石となるべき行動の方向性が一応見せられているわけだが興味深いのは強力な牽引役を置いていないところだ。仮面ライダー、メイン怪人共に初変身を終えたわけだがどちらも己の(視聴者が共通認識として抱くところの)使命に無関心と言ったところ。おおよそ話を牽引するには不便であり、そんな二人をメインに据えているのもこの作品の挑戦的な所ではないだろうか。

 

人物

 自分のことは頑なに開示しない巧。彼の名前が判別するのも自己紹介や他者から呼ばれるものではなく、紛失届へのサインというもの。これまで性格や価値観に違いはあれみな人当たりがよい主人公が続いただけに、名前を知るのも一苦労な巧は本当に異質だ。どんどん自分を語る真理とのギャップでより明確になっている。また、真理が巧を積極的に引っ張りまわすためにあれこれ喋るので、結果的に彼女の情報は無理なく開示されている。これにより、ベルトと父親の関係から彼女もまたなにか秘密を持つことが明らかとなった。ただ巧もただつんけんしているだけではなく、真理とのやりとりの端々から根っこのお人よしさを随所で見せているから本当にこの回は人物の掘り下げをメインにしているといえる。

 どこかのんきな九州組と対照的に衝動的な殺人に明らかな後悔を見せる木場。しかし同時に、そのまま力に溺れないだけの良識がある。それでもやっぱり2話のラストに知恵を手にかけてしまう。衝動的な殺人とそれへの自戒。人間性が持つ多面性を彼も持っていることを見せると同時に、怪人になったからと言って即座に猛獣のようになるわけではないことを見せている。

 木場を救う謎の存在、スマートレディ。彼女の怪しさが何を表現しているかというと、その背後にあるスマートブレインの怪しさに直結しているのだ。どういうことかというと、木場が眠っていた部屋のテレビでオートバジンが映ることから555ギアとスマートブレイン社のつながりを感じさせる場面を見てほしい。しかし、ここでメインキャラと接触するスマートレディが怪しいため、この会社をクウガの警察やアギトのG3チームのような明確な人類の味方だとは期待できなくなる。つまり、スマートレディの怪しさとはすなわち背後のスマートブレインの怪しさを表現するためのものであり、彼女の正体が何オルフェノクだとか実はアンドロイドだとかは、別に重要ではないのである。

 刑事のコンビ。知恵を刺激しないように言い回しを工夫するベテランと思ったことを口にしてしまい彼女に逃げられてしまう若手。ここで警察としての手腕の差異を描いているのが上手い。一方で、一般市民に過ぎない木場を頼る知恵。気が動転していて判断ができないのか、よほど木場を心の底では信頼していたのか。まあ前者なのだが、この回でさほどよろしくない性根であることが明らかになる。これは1話で一彰の悪意とセットに出てくるのではなく、この回に時間差攻撃で出てくることで木場の辛さがより際立って見える。しかも偶然にも木場にとっては事実なのだから、とっさに強く否定できないのがこれまた間の悪いことだ。そういえば木場が自転車の幻影を追いかけるシーンは田崎監督の発案らしい。

 

 

ファイズオルフェノク

 第1話だけだとどういう存在かわからなかったオルフェノクが今回で人間が変異した存在だということが明らかになる。1話感想の繰り返しになるが、現代人が変貌するという怪人は(昭和ライダーから見れば伝統であるにもかかわらず)、平成ライダーでは様々な種族が続いただけに改めて新鮮である。今回の中でを2回見せることで”灰化”をゲスト怪人固有ではなく種族共通の力だと印象付けている。この灰化能力のせいで人は跡形もなく消え、木場の殺人を図らずも隠蔽してくれることに。人間側にいつまでもその存在が認知されない理由付けにもなる上手い演出だと思う。

 オルフェノクが長台詞を喋るときは影に人間態が映り喋っている。これは初期平成ライダーが試行錯誤していた芝居の説得力の一環だろう。口が開閉する着ぐるみも多い戦隊怪人に比べ、ライダー怪人のマスクは一体成型であり大きくは感情を表現できない(グロンギやアンノウンは一部口が開閉したりギニョールで顔の動きを表現していたのだがやはり撮影の負担が大きかったのだろうか)。そのようなマスクで感情の有る長台詞を喋ることを初期平成ライダーは避けており、謎言語により理解よりも断絶感を一層与えるグロンギ、基本的にうめき声しか出さないアンノウンとミラーモンスターといった工夫がなされている。現代人が変貌する(感情のある芝居は避けられない)オルフェノクではどうか?その演出があの影だ。命のやり取りをしている間でもふと出てくる人間性、そういったことを表現しているようでもあり、まさにファイズが奪おうとしているのはどのような命なのかを克明に見せる。こういう演出はやはり手間がかかるのか後続作品では鉄面皮の怪人がそのまま普通にしゃべるようになっていくのだが、ワームやファンガイアで顔の幻影が浮かび上がる演出などここぞという場面で使われるなど部分的に残っていくこととなる。

 オルフェノクと同様にファイズの力でも繰り返しの手法が使われている。冒頭でミドルキックでオコゼを倒す。同様にゾウにも同じキックを出すのだが、こちらは相手が硬くて通用しない。ここで必殺キックが必要だとお披露目される流れになるわけだ。しかし足に狙撃スコープをつけるという構造をここまでかっこよく魅せるスタッフの手腕には舌を巻く。ポイントマーカーを撃ちこむという発想が凄い。自分だったら「足にスコープつけてどうすんじゃ…覗き込みながらキックすりゃええんか?」ってなる

 

前回、今回とオルフェノクを倒した直後のリアクションが描かれない巧。変身解除を映さないことで、怪人を倒してどういう感情を抱いているのか視聴者に見せない。描写が巧みだ。巧だけに。