フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第3,4話

前回までが、クウガとの差異と世界観の説明に尺を割いていたため、主役である翔一が戦う理由などはこの回で描写されることになる。今の個々の世界観が確立された平成ライダー枠からは少し外れた構成だがこれも黎明期ゆえだろう。

 

 

翔一

 どうやらG3を襲ったのは自分の意志ではなくアギトの力が制御しきれなかった模様。彼はアギトである・アギトになることは今回が初めてではない様子だが、少なくとも戦うのはアンノウンが活動し始めてからそれに呼応したここ最近が初めてであるのが見て取れる。したがってアギトとしての達人じみた動きは長年の戦闘経験によって完成したといったものではなく、アギトの力によるもの、もしくは翔一の天性のセンスということになる。そのため暴走してしまうことは存外自然…とまではいかないがやむを得ないことなのだろう。

 失意の彼が吐露した「俺らしいってなんだよ」。彼は記憶喪失であることを普段は気にも留めていないがさすがに異形に変異したことに当たっては、自分が何者なのか気になるようだ。ここで注目したいのが視聴者にとっても翔一がどんな奴なのかまだ分かっていないということだ。例えば、番組終盤に失意のヒーローがそのような台詞を吐けばそのキャラの人となりを知る視聴者は応援したくなる、あるいはイラつくといった感情を抱くだろう。しかし現状の翔一は何かに対する拘りを見せずフワフワしている。彼らしいがなんなのか知りたいのは我々なのである。

 この作品を担当する白倉Pが著書においてヒーローの特徴の一つに「出自不明の来訪者」が示されている。その点で行くと翔一はまさにヒーローだ。桃に包まれた桃太郎のごとく水辺に流れ着き、彼自身が己のことを知らないため誰も出自を調べられない。しかもオーパーツも同じ来歴であるため、彼とオーパーツの関連性も匂わせられている。

 この2話で真魚に正体を知られ受け入れられた翔一。異形を恐れず打ち解ける様は美しいが、実は真魚も又異形とまではいかずとも異能であるのだ。身寄りがなく己の行く末への不安、そんな感情を抱く真魚が図らずも同じく異能の同族を見つけた安心感もあるのではないだろうか。また、この二人は秘密を共有するわけだが、真魚が超能力者であることを翔一は知らない。秘密の共有というより一方的に握られているのだ。

 

氷川

 この回で氷川は翔一とつながりを持つことになる。しかし変身後の姿ではお互いの素性を知らない。しかもこの時点ではアギトはG3チームには謎の生物としか思われていない。「正体がある」という発想すらないのだが、ここからどうたどり着いていくかに本作の醍醐味がある。実直な面が目立つ彼だが、あまりの翔一の昼行燈ぶりに彼を軽んじる心情を抱いてしまっているのが見て取れる。小沢は勿論北條にもかしこまった態度を取る氷川ですら「なんかこいつ変だ」と思わせる翔一のマイペースぶりがここでも際立ち、視聴者にも「やっぱり翔一は変な奴なんだ」と確信させる形となっている。

 またG3のストーリーラインは基本的にチームで動くためメンバーや関係者の人格も順次描写されている。北條はG3チームに対しあれやこれやと画策する敵対心を持つものの、上層部に対し情報の隠ぺいなどを行うことは無くあくまで果たすべきことは果たした上でG3チームに挑んでくる。良い奴ではないが単なる嫌な奴でもないことが見て取れる。

 同様に小沢も、このヒーローやロボットものによくある発明博士でおわらず、豪快な性格を見せる。「アギトもアンノウンも八つ裂きにしてやれ」「気に食うか食わないかで物事を決めればいい」と物騒な物言いも多いが、他人を後ろ盾や正当性に使わず己の意志で物事を決め、それを臆することなく前面に出す姿勢は見ていて気持ちがいい。

 

葦原

 この時点ではまだ呻いているだけ。しかし、アギトとアンノウンの戦いに並行して病院から抜け出すため、実はグロンギにも人間態があったようにアンノウンの人間態なのではないか?というミスリードを誘っている。

 彼の退部を認めず家まで尋ねるコーチ。その関係性はまさに悩める仮面ライダーおやっさんの関係だ。葦原の体に起きた異変を目撃するコーチ。昭和ライダーおやっさんのようなよき後見人となるのか!?

 まだ葦原の性格などはあまり描写されていないが、体に走る激痛などを(人に見せられるものでないとはいえ)自分一人になって我慢する辺り、忍耐強いが他者との距離では一線引くところがある。他人の居場所は守るが己の居場所はなんだがつかみどころのない、不定形な翔一と対照的だ。

 

アギトとアンノウン

 今回は早くもアギトの苦戦が見られるわけだが、よく見るとパワーバランスに細やかな気配りがされている。今回登場したトータスロードは甲羅の硬さに目が行きがちだが、前回のジャガーがバラバラに戦っていたのに対し連携してアギトに対処している。よって、甲羅+連携でアギトの優位に立っているわけで単体ならばアギトが優勢になって勝利を得る、1対1ならば依然アギトは強いという形が見えてくるわけである。

 またG3もここで単独撃破を上げている。放送時はなんだか頼りない印象を受けたノーマルG3だが、見てみると自分がダメージを受けながらも相手にもやり返す、肉を切らせて骨を断つ戦法で有効打を与えていることが見て取れる。なのでやられながらも何らかの仕事はこなしていると言ったところ。しかしまあこの回、小沢さんの「根性見せなさい」はカッコいい啖呵だが、無策で無茶を言う…とも思う場面であった。

 

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