フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第5,6話

 第3のライダーギルスが登場する。それに加えアンノウンの殺害対象の選別の有無、氷川の過去などこれからのアギトを牽引していくための要素が示唆された。前回までがクウガとの差異の説明段階なら、ここからアギトという物語のエンジンをかけていくところだ。

 今回オーパーツから赤ん坊が生まれ出た後は、魂が抜けたようになってしまう三雲。これは彼女なりに人体錬成という禁忌の領域に踏み込んでしまったことへの良心の呵責があったのではないだろうか?本人もまさかとは思っていたが…と言いたところだろう。オーパーツの残骸を運びだす職員の中に迷彩服の人たちが見えたが自衛隊の者だろうか?G4を作り出すための足掛かりはこの頃からあったと想像すると楽しい。

 また、今回でG3チーム内でのアギトの正体についての会話があったが、ここでのニュアンスは「アギトとはどこから来た生物なのか?アンノウンとどう違うのか?」程度であって、よもや人間が瞬時に変身しているとは露とも思っていないようだ。

 この回にて、互いの正体を認識せず、翔一、氷川、葦原が一堂に会する。このすれ違いのドラマにやきもきするのも醍醐味だろう。

 

翔一

 真由美に対してデレデレするなど人並みな所を見せる、こういうところが翔一が成人ではなく仙人たる所以だろう。ただそればかりでなく超然としたところも見せる。真魚と真由美に「会いたくなったら会いに行けばいい」という場面だ。言うは易しだが、多くの人は時間だとか旅費だとか様々な制約を思い浮かべ口にはしない。しかし、それでも翔一は口にする。あるがままの世界と自分を受け入れているのと同様に、何かをしたくなったら即実行すればいいのだという。この非凡なところが物語の主人公を担う器なのだろう。

 

今回真魚は真由美にデレデレする翔一に「別にお前が好きなわけではないが、みっともないので注意しているだけ」という。これは本心だろう。真魚と翔一の関係は彼がアギトであることを一方的に握っている関係だ。秘密を共有する悪友のようでもある。それが自分以外の存在に気を取られ右往左往するのが気に食わない、そんな繊細な距離感もこの二人の面白い所だ。

 前回の続きから、勝手に瓶を割って硬貨を使用した太一にお灸をすえる美杉教授。しかし硬貨が購入に使用できたということは本物(少なくともそう思わせるくらいには精巧で瓶に入れるマジック用ギミックなどない)である。これを教授が見落とすとは考えにくい。その後他の点を検証しようともしないあたり、彼にも思う所があるのだろうか。

 

氷川

 北條の主観を通してだが氷川がG3装着者になった経緯が語られる。それはあかつき号と呼ばれる船の海難事故からたった一人で乗客を救ったのだとか。何故海上保安庁ではなく一介の刑事の氷川が助けに行かねばならなかったのか?北條の言う組織の汚点があったのならば氷川はそれに触れてしまったために、上層部が彼を監視するために東京へ呼び寄せたのか。実直さを絵にかいたような氷川だが、ここでまるで翔一のような過去の不明瞭さを示し始めた。メインライダー3人のうち全員が重苦しい部分を持つ、まさにサスペンスのようだ。

 氷川と言えば無骨さだがこの回で真由美の父の超能力者の可能性を探るなど柔軟な思考を見せる。可能性が有るならばそれが超能力という突飛な存在であっても視野に入れる、刑事としての確かな能力を見せる。

 

一連の戦いからアギトを味方だと言い切る小沢。いつもの通り御室は呆れたような反応をするが、意見を改めることにも臆さず他者の目も気にしない彼女のスタンスはやはり気持ちいい。彼女の近くで仕事をする人間は疲れそうだが。

 氷川を装着員として頼りないと言う北條。視聴者の目線からすれば、氷川の問題というよりG3側のパワーと格闘能力不足であるのだが、その戦闘場面を彼は見ておらずしかもG3を乗っ取りたいわけで同システムを悪くは言いたくないのだろう。

 

葦原

 葦原の相談の要請に電話口では応じるものの、居留守を使うコーチ。これは単純な拒絶より気が滅入ると思うのだがそれを責めずに黙って去る葦原。やはり彼は己の中で他人との明確な一線がありそれを遵守する性格のようだ。単純に呆れただけかもしれないが。そんな忍耐強い彼だがそれでも己に起きた常識外の変化から過去の人間関係で気を紛らわそうとするのは責められないところだろう。

 真由美に再開したときは一度は謝罪して去ろうとする辺り、人に迷惑を掛けたくないという思いとそれでも人並みに悩んでしまう思いのせめぎ合いが見て取れる。最終的に拒絶されるものの、それでも見返りを求めずに戦えるその精神力は絶望的な事故から立ち上がったことからも繋がっている。

 最終的に葦原を拒絶する真由美。真魚と翔一の関係と対照的だが、真由美は真魚と違って普通の人間である故にやむを得ない面もあるのではないか。真魚と翔一は異能という同族とも言え、彼女にとって翔一の秘密は安心感をもたらすこともできるが、真由美は言葉通り「葦原とは違う」のである。それに最後には謝罪の言葉を絞り出している辺り彼女を責めきれない。真由美の「普通に生きて行きたい」という言葉、異形になった後でさえも葦原が「生きる目的・打ちこむ目標を求めるタイプ」であることと対照的ではないだろうか。

 この回、翔一たちとは大した関係ではないと葦原に誤解を解こうとする真由美や、寄りを戻しかけたとはいえいきなり彼女の家によるほど「図々しくはなれない」と発する葦原など微妙な距離感を示す台詞の応酬が多く、人間ドラマとして見ごたえある描写が多い。

 

 

アギト・アンノウン

 この回にて少年がアンノウンの上位に立っていることと、殺害方法から無差別に人を襲っているわけでも単なる嗜好でターゲットを決めているわけでもないことが明らかとなった。三雲を無断で殺害して自害させられた女スネークロードは勿論、後者に関しては男スネークロードの能力の使用方法にある。1話でジャガーロードが光の輪を出し能力で氷川を殺害しかけたものの取りやめていたのに対し、今回スネークロードは葦原に対し迷うことなくその能力を披露していた。また、弁髪を切り落とされた女スネークロードは少年に三雲殺害を制止されたにもかかわらず実行し粛清された。やはりアンノウンには明確な選別基準があるのだ。

 さて、今回お披露目となったギルス。その戦闘力はアギトに比肩しうるものだった。これまでアンノウンはおよそ感情と言う物を見せず、アギトに対する敵愾心か謎の少年に対する畏敬のようなものくらいでおよそ戦闘中でも感情は見せなかった。そのアンノウンが恐れをなし逃走を図った辺り、ギルスの格闘能力が伺える。アンノウンの武器を破壊したり特撮面でも見せ場が多い。

 アギトでは刃物攻撃は必殺であると概要感想で触れたが、この回では例外として即死に至らないかわりに、独自のダメージ表現がなされている。ギルスクロウに切り裂かれたアンノウンのわき腹から光が漏れている描写と、アギトストームフォームの薙刀に女スネークロードの弁髪が切り落とされている描写だ。いずれも単なる打撃ダメージのようなもので終わらせない演出面の妙味だ。また前者の描写からも「霊石以外は人間とほぼ同じ」といわれていたグロンギとは明確に異なるのが視覚的に見て取れる。

 

 放送時、ギルスの変身セットは発売時期が登場から遅れておりTVCMも作られなかったが、これは人気を受けた急造品であるためだという噂が流れていた。実際ギルスの変身演出は変身後の姿に幻想的に切り替わると言う物であり、変身時にベルトだけが浮かび上がるとか何か操作すると言う物は見られない。今でいう販促要素が薄いためそんなうわさが流れるのも納得だ。

 

 今回ラストにて、真由美は実家に帰って行った。アンノウンから逃れるのにそれで十分なのかという疑問もあるが、そもそも逃げる為ではなく実家の母を一人にしないためと明言されているのでその理由が主だろう。

 その上でアンノウンごとに対象が異なる理由付けを想像してみると

・アンノウンごとに感知器官が異なる(女スネークロードの髪や、後の回で出る蜂の触角)ので見つける対象に差異が出る。

・アンノウンは謎の少年の周囲で動き始めるので活動の出発点が東京周辺。そして被害を出すうちにライダーに見つかって倒されるので東京外に出る前に被害は止む。

 といった辺りではないだろうか。

 

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