フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第13,14話

風谷殺害事件について進む回。アンノウンと一見関係ない謎がなんのために存在するのか?こういった謎も並行していく。

翔一
 今回単なる苦戦の域を超えて命の危険に晒された彼。これまではなんとなくの善性とアギトの本能というふわふわとした理由で戦えてきたいうことはこれまでに語った通り。ただそれでも自分が死ぬという先行きを聞かされたときに漏らした真魚への心配から、なんとなくの心構えの中でも真魚というわかりやすい隣人は大きなウェイトを締めていることが改めて提示された。やはり、見知らぬ人間のためだけではなく明確な“顔”が見えていたほうが良いのだろう。
 翔一は人並み外れた強さを持つが、過去のことを思い出したくないことや真魚を戦うための目処にするなど人らしい弱さも垣間見えるのだ。

 断片的な情報から風谷殺害事件から伺い知れる真魚父の人間性。もちろん人の人格が一面的であることはないのだが、真魚が抱く父へのイメージもまた何かのフィルターを通した幻想なのだろう。前回、超能力の実在の有無そのものをあまり考えないようにしていた美杉もやはり風谷の別の一面を知っていたのだろう。
 そういえば太一が欲しいものに上げていたバスフィッシングの道具、この頃は流行ってたなあ。時事性を感じさせることの少ない画作りをしている本作だがこういうさりげないところには時代性を感じる。

氷川
 部下を守りながらも仕事の体裁を利用して北條の醜態をほくそ笑む小沢。やはりただ単に成人というわけでもなく、仕事を楽しむイイ性格なのがこの大将の面白いところだ。また、氷川よりもいち早く翔一の底知れなさを見抜く小沢。こういうところで器がでかく、慧眼を持つ所を見せている積み重ねが光る。
 北條が提案したアギト捕獲作戦。前回の感想でも書いた通り発想の出発点は間違ってないが、ここまで拘ってるのは氷川に殴られたことで意地なったからという可能性があるのではないだろうか。
 そしてその氷川だが、小沢が翔一を評価する光景を見ても彼は翔一に対する苦手感覚を払拭できない様子。人を見る目も武骨漢だ…


葦原
 今回大きな進展はないが、テニスボールの繋がりで風谷殺人事件とあかつき号のつながりを見せた。
風谷殺人事件に絡む超能力の影。超能力といえばアンノウン。ということはアンノウンとあかつき号にも繋がりがあるのが見て取れる。
 前回の佐恵子への応対もそうだが、大学辞めたばかりの若者にしてはハキハキしてるし敬語や謙譲語の使い方もしっかりしてる。粗野な印象の割に根は結構硬い人なのか葦原。

 

謎の青年
 沢木にも彼の真意はつかめない様子。またアンノウンのみならず、アギトにも作用する力を持つ。しかも、沢木はアギトをサンプルだから助けろと請い、青年はそれを承諾する。別にアンノウンがそこまで熱心に殺人を進めなくてもいいのか?こういった描写から敵はピラミッド型の階級構造を持つわけではないことがわかる。 
 船に乗りたいかと沢木に尋ねる青年と、それよりも“知”が欲しいという沢木。今見ると凄くわかりやすく象徴的なシーンだ。


アギト&アンノウン
 さて戦闘シーンでの苦戦させるだけにとどまらず翔一の命そのものを脅かしたサソリ。蠍の尾だけでなく、マスクの口や頬にある顎脚が動くなど、作り込まれた着ぐるみによる生物感が凄い。アクションのみならずこういうところの特撮でも気合が入っている本作品。これまで連携や飛行能力でアギトを翻弄することはあっても正面からのぶつかりあいでアギトを圧倒することはなかったアンノウンだが(防御力の高かった亀も連携することでそれを生かしており単体だと結局突破されている)、こいつは強敵である。
 アンノウンを倒せば能力も消えるという下りはかなりエンタメに割り切っている。こういうところは引き算するので本作のどこに集中すればいいかの見やすい導線となっている。
 サソリ対G3戦。G3の装甲もさることながら、斧の刃は喰らわずに柄の部分を受け止める殺陣の細かさが良い。G3の装甲の進歩に加えて、相手の攻撃をしのげる説得力がある。
 不思議な経緯で生まれたスライダーモード。不思議な力による推進力ではなく、バイクから投げ出される勢いを利用するという、普通の人間なら死んでいる加速を利用するところに仮面ライダーの身体能力が覗える。



 改めて本作を追って気になった点。それはアンノウンの外見だ。前作グロンギより動物成分の濃いデザインのアンノウンだが、モチーフ生物の特徴に関わらず共通して大きな口を持っている。対してアギトは(顎門“あぎと”などという名を持っているのに)口が見えず仮面のようになっている。口を覆ったアギト(とG3)に対して大きな口が見えるアンノウン、そして中間にいる普段は見えない口が出現するギルスといった位置関係が見えないだろうか。だがそれでいてものを食べる描写があるのは逆だ。大きな口があるにも関わらず何を食べてどう暮らしているのかわからないアンノウン、一方で戦うときは物言わぬ戦士だが戦場を離れれば健啖家なアギト。なにやら象徴的ではないだろうか。
 (変身ヒーローという番組上やむを得ないものの)顎門などという名の割に牙状のディテールしか顎要素のないアギトだが、翔一くんはその顎を使ってよく食べる“のだろう”。だからこそ翔一くんが“仮面ライダーアギト”なのだ
 とここまで書いたのだが、この時点では翔一は作る場面は多くても、食べるシーンが映るのは意外と少ない。今後に変化があるのだろうか。


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