フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第15,16話

翔一
 天気が良かったから記憶喪失からも立ち直れたという翔一。もちろん大半の人間にはそんなことは不可能だ。今の、記憶喪失となった翔一は人間的な弱さ・俗っぽさを持ちつつも物語の主人公たる特異性をも持ち合わせていることが此処でも描写されている。
 真魚の、「翔一に恋愛感情があるわけじゃないが、他の女にデレデレするのはつまんねえ」という独特の距離感が絶妙だ。今までどんなアンノウンも侵すことはできなかった美杉家の領域であるが、榊という侵入者が来たわけだ。しかしそこで居場所を侵されたのはターゲットの翔一ではなく真魚。美杉家は翔一の居場所というより真魚の居場所である面が大きいのだ。自分の居場所というものがあるかもしれないがどこか不定形で定まらない印象を受ける翔一は河野刑事のいうところの、まさにアンノウンだ。


氷川
 アンノウン以上にアギトの評判を気にしている氷川。一方で、小沢が翔一を評価し彼とのコミュニケーションを推奨してもそれに納得できない様子。(他のことなら素直に従うのに)。実直な氷川だが対人関係においては幻想というフィルターが意外と強固…?
今回、榊が氷川の顔を見て驚いてた様子から、彼女があかつき号に乗り、氷川に救助されたのは明白だ。

 前述の通り、翔一くんの底知れなさを感じとる小沢。傍から見れば昼行灯の翔一の真髄を見抜く眼力も天才たる所以か。テープの音声に気づき資料化していた尾室も今回のファインプレーだろう。そもそもこの作品で、氷川を不器用だと初めて言葉に発したのは彼なのだ。ものを見る目は有るのである。

 北條のアギト捕獲作戦は、アギトが劇中人物にとって謎の生物である以上捕らえて解明したいというのは一定の理がある。だが、このプランに固執したり特殊ガス弾を無断使用しているのは氷川に殴られてムキになっているのが大きいように見える。氷川がアギトを崇拝しているという、あながち間違ってない発言をする場面もセットなので一概に北條をどうこう言えない複雑な心境を誘う。


葦原 
 榊が食べ物をぶち撒けて追跡を撒く行為に対し食べ物を踏まないように追跡を止める葦原。こういう細かい描写が積み重なっていくのだ。
 榊の言葉を信じて氷川を力ずくで遮ってしまう葦原だが、このとき翔一と違って連行されなかったのは氷川が(自分はこの手の勤務形態を詳しく知らないが)公務中に当たらなかったからだろうか…?例えば、明確に令状を持って捜査している最中でなければ公務執行妨害に当たらないとか…?思えば氷川さんは何の仕事であの商店街に来ていたのだろう。

榊さん
 明らかにあかつき号の乗客ではあるが、佐恵子と違い能動的に翔一に会いに来ておりしかも彼がアギトであることは既知の様子。それでいて過去を隠す。彼女(とその背後にいる者)にとって翔一の動向だけを知りたいが、彼が記憶喪失だったことは不測の事態だった様子…。何故乗客ごとに翔一に対する反応が違うのか?
また、葦原の存在にはなにか思い当たるものがありながらもギルスの存在は知らない。それでいて、彼に「何かわかったら教えてくれ」と情報は(“可能ならば”レベルだが)ほしい様子。ギルスは珍しいというセリフと合わせるとやはりアギトやギルスは個人名ではなく種名なのか?であるならば翔一や葦原は生まれながらにしてアギトだったのか?何故

青年&沢木
 「人間は皆、同じ」という青年。ここで「人間は皆“愚か”」などと言った人間を侮ったり優劣を判断するようなセリフを言っているわけではない。そして前述の通りアギトに対して明確に殺したいわけでもなく、同時にアンノウンたちの上位存在でもあることが見て取れる。前回までの描写だとアンノウンとアギトは上位存在とみなし人間を間引きしているのでは…とも考えられるが、今回の描写で人間に対しても悪感情はないところを見ると彼は一概に誰の味方とも言えない情報が揃っているのだ。


思えば今回は幻想・フィルターというものが番組全体に横たわっていたと思う。今の自分が生きている状態が素晴らしく、それが続けば良いという漠然とした願い。アギトという存在への憧憬、人間という種を知りたいという探究心、あかつき号を解明すればなにか救われるかもという思い。…ではあかつき号の乗客たちもなにか幻想のようなものを共有しているのだろうか。それを固辞するために相互のつながりの中だけで生きようとしているのだろうか?
 

アギト&アンノウン
 ジャッカルロード。アギトグランドフォームはスピード翻弄できるがストームフォー厶やギルスには即座に対応される様子を見ると、逃げ足は厄介だが格闘能力はさほどでもないのか。
 以前アギトはフォームチェンジのロジックよりも殺陣の見栄えの観点から使い分けてるように見えると記した。ジャッカルロードの大鎌とストームハルバードで切り結ぶのは見栄えが良い。

 今回気になったのがアギトの防衛本能は何によって刺激されているのだろう。アンノウンの戦意か、はたまた被害者の救難信号か?もし後者ならばアギトは蟻のような社会性昆虫における兵士階級みたいなものなのだろうか?


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