フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第17,18話

3話構成。ここから連続ドラマ色が濃くなり前後編の区切りが弱くなってくる。

翔一
 翔一の持ち物は少ない=彼の領域は小さい、ということを表しているのかもしれない。彼は他者の居場所にはいつの間にかするっと入るが、彼自身の居場所は不定形で今ひとつ不明瞭だ。彼にはパーソナルスペースというものがないように見える。やはり彼もまたアンノウンと言える。それを示すようにおやじさんと呼ぶなと距離を取ろうとしていた花村ベーカリー店主も短い期間でレシピを渡すまでになっている。
 ここまでで全体の三分の一の話数が経過したわけだが、翔一くんの戦いやアンノウンへの無機質ぶりがやはり凄い。一度はアンノウンやアギトについて話したことはあるが世間話の域を出ておらず、真剣に探っているようには見えない。この手のジャンルにおいては戦う理由というのは主人公の人柄を見せることにかなり重要な役割を持つ(余談だがガンダムビルドファイターズにおいては6話で「戦う理由」という直球なサブタイトルが出てくる)。そこへ行くと翔一は希薄だ。勿論「人助けに理由はいらない」という類の台詞を発するキャラも世にはいるがそれでも腹を据え直す話はある。そういった中、翔一はお人好しさとアギトの戦闘本能だけで戦えてしまっているのだ。とっつきやすいようでいて、かなり独特なキャラ造形ではないだろうか。


 超能力を使わず尋問で榊の裏を暴こうとする真魚。これは単に暴きたいだけでなく、人間として優位に立ちたいという気持ちの現れかな。超能力を持ったヒロイン、という属性の割には聖人君子ではなく人としての喜怒哀楽や嫉妬がしっかりと描かれている。アンノウンの被害者が、超能力(候補)とされながらも市井の人々と地に足ついた存在と描かれてることと合わせてかんがみると、力を持っていることは即座に特別な存在であることに直結しないことだと言っているように見える。


氷川
ようやく北條の嫌味を認識する氷川。今までの描写を比べてみると以前は氷川自身に向かってのもの、今回はG3に向けてのもの。おそらく本人に向けての嫌味は真摯に忠告と捉えるのだろう
。良い意味でも武骨漢と言えるのではないだろうか。
 今回も北條と丁々発止のやりとりをする小沢だが、やや言葉がきついように見える(黙ってなさいとか)。彼女は物事を好き嫌いで決める、ある意味で人の理想の体現ではあるのだが同時に凡人にはきつく見えてしまうという現れなのかもしれない。天才というのはまさに天の存在なのだ。
 北條アギトとアンノウンは同種と捉える。それ自体は視聴者目線では間違っているが劇中アギトは変身体しか見せていないのでそういう理屈になるのも変ではない。思えばアギトもギルスも変身体では言語すら発してない。アンノウンの捕食者くらいにしか捉えられなくても当然か。
 そんな中でもG3チームの功績は褒め至らない点は厳しく言及する司は確かに物事を見れている。それに対し逐一批判を付け加える北條。確かに一度決め込んだスタンスから離れられないという点で思い込みが激しい。
 しかしまあ北條の司に対する態度、まさに氷川のアギトへの思いと同じではないか。彼も司という幻想の中で生きている。この作品はそれぞれのキャラクターがそれぞれの幻想を通した現実を生きているのだ。

葦原
 目的がないと生きていけないから、父の死因を探しているだけと明言する。そもそも父の死を聞いたときもさほどうろたえてなかった。視聴者としては、じゃあアンノウンと戦えば…とヒーロー番組の色眼鏡で思ってしまう。しかし、彼はアンノウンを感知する能力は低いし、そもそもアンノウンが出たら戦うという「後手の対処療法」は彼の人生における「打ち込むこと」に当たらないのだろう。先んじてなにかに向かうのが彼の言う“目的”なのだ。




葦原に対しお前もなにか知っているはずだと決めつける彼女。変身する条件に対し何かしら知っているはずだ
彼女のいう“あの人たち”とは?そこに葦原を誘うのはまさに異能ものの作品にしばしば見られる、主人公を非日常の戦闘チームへ誘う選ばれし集団だ。あかつき号の乗客とは身を潜めて戦うヒーローチームなのだろうか?そう思わせる場面である。

アギト&アンノウン
 3話生き残ることとなったアンノウン。アンノウンの総数はほか作品と対して変わらないがこうして長く生き延びたり逆に一話で倒される個体を出すことで緩急をつけているので怪人数が少ないと感じることはない。放送時のサイトでもアンノウンのやりくりが言及されてたし、ライダーは怪人のきぐるみに割くリソースが少ないとはよく言われる話だが、この作品でそう感じないのはこうした緩急の賜物だろう。
 榊にも北條にもアギトとは別種と判定されているギルス。やはり明確に別の存在なのか。しかし変身してるときのの方が元気だなギルス。葦原さんの方は常に死にかけなのに。ギルスの姿で生活した方が健康なんじゃ…?
 そして今回の注目点。ガスで弱っていた効果もあったろうとはいえ初マッチはG3の勝ち。アンノウンに優勢なギルスと劣勢なG3の組み合わせでこのような大番狂わせが起きるのはダイナミックな展開だ。

人が人を殺してはならないと発したヒドロゾアロード。アンノウンが人を殺すのはいいが人が人を殺すのはダメ。考えられる一番の理由としてはやはり青年は人間社会の崩壊は望んでいないということだろう。となれば考えられるのは人の間引き?超能力者だけを狙うのは彼らが人の調和を乱すからと考えているのだろうか。

次:
fra-gillelog.hatenablog.com