フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第21,22話

今までの独立していた3ライダーが一挙に揃う転換点。

翔一
葦原が寝込んでいるときに真魚を榊宅に挙げないようにする。葦原の病状を慮ってのことか。彼は大雑把なようでいてこういうところに配慮できるのよな。自分のことだけでなく葦原のことを榊に伝えたり、パン屋の仕事中にパンを葦原に届けたりする根の良さが随所で描かれてるのが好感ポイントだ。

 今回面白いのが三角関係を感じ取り困惑しながらもあまり刺々しい雰囲気にならない翔一と葦原。しかも前回会ったときには一悶着あったが二人共引きずってない。お人好しの前者と、干渉しない・されない限り一線引く個人主義の後者。“いつも遊ぶ仲良し”といった関係にはならないだろうが、程よい距離感でやっていけそうな二人だからこそ誤解で争う悲しさが際立つ。

 榊が死んでも悲しいというより「世界にどこか空白ができたよう」と表現する翔一。彼にとってはこの世界すべてが自分の領域とも言えるし、そもそも自分の領域を持たないとも言える。いずれにせよ、世界の認識が常人のそれと大きくかけ離れているのだろう。


氷川
 アンノウンの殺害対象が超能力者であることがほぼ確定したことに満足せず、さらなる根源を追求する氷川。G3装着車で有る前にやはり優秀な刑事である。
 また、北條の「人はいい存在。なぜなら私がいい人間だから」にいまいち気のないリアクションをするのだが…。今まで北條の話には比較的真面目な対応をしていたのにどういうことだろうか。きっと北條の真面目に言ってるのかでユーモアで言ってるのかわかりかねるからだろう。思えば嫌味や皮肉を伴うジョークはあっても、純粋な笑い話は氷川にとって未知の体験だ。彼にとって北條もまたアンノウンと言えるのではないだろうか。



 今回から話の中心になる小沢。ギルスから感情の有無を読み取る小沢。やはり確かな観察力だ。アイテム開発博士としてのキャラだけでなく、視聴者がアギトやアンノウンの情報を認識して追うために半歩先を行く牽引役を担っているのだ。そして尾室も「アギトもこいつ(ギルス)も人間だというのか」と意外にも核心をついたことを言っている。
 さてそんな小沢。G3の力不足を認める度量を見せる一方で、教授に対し相手に勝負を降りるように促すなど(本人は善意のつもりだが)彼を見下した態度をとる。それを傲慢だと指摘されても納得できないところを見ると、現実を全て受け入れてそれを前提にして(最短ルートの)行動するのが当たり前といったところだろうか。幻想の中に生きる人間が多い本作において、対照的に彼女は「現実だけに生きすぎている」と言えはしないだろうか。
 しかし、一転して彼女と翔一は明確な受け答えをしている。氷川はなんとも翔一にペースを乱されてあまり良い思いをしてないが…。やはり常人離れしたもの同士目線が会うのだろうか


葦原
 彼を襲う破壊衝動のような声。もしかすると2話のアギトにもこれが聞こえてたから暴走したのだろうか?これをひたすら堪えて抑え込むあたり、彼はギルスの力と共存するというよりは力づくで使用しているという感じか。にしても彼は、戦闘スタイルが荒々しいだけで別に暴走しているわけではないのだ。ああいうノリで戦ってるだけなのだ(ギルスフィーラーを使うとき若干カンフーの息吹が入るのは彼がカンフー映画世代だったりして…)。そういう意味では彼にも力を扱う資質はあることになる。
 今まで真由美やコーチからの仕打ちに対しても忍耐強く耐えていた彼がようやく人間らしい弱みを見せる。目標がないと生きられない彼だが、あかつき号の真相という(自分でも自覚している)仮初の目的では現実に耐えることは難しのだろう。彼にとっての指針となるものは現れるのかそれもとも…。
 この作品では食事シーンが多いわけだが、彼にはまだない。しかも今回は翔一とパンを一緒に囲むシーンがあったにも関わらず口に運ぶ描写はない。もちろん飲まず食わずで生きてるわけではないのだが、この作品において食事ば面がないということはまだ彼は地に足ついた生き方をしていない、その精神状態にないということなのだろう。


あかつき号&榊
 力に溺れ復讐に使っている榊…これをアンノウンが恐れているのか?
 私心で力を使うなという相良。発言内容は正論でありここだけ見るとあかつき号関係者が一致団結して困難に立ち向かおうとしているようだ
。ここだけ見ると、アギトたちのライバルになりそうな異能集団になりそうな雰囲気を醸し出している。 
 だが、アンノウンからの逃走中に翔一に出会うと露骨に嫌な顔をする榊。アンノウンから逃れるには都合のいい助っ人のはずなのに。それだけあかつき号での出来事は思い出したくない感情の方がでかいのか。また他のあかつき号の乗客と距離をおいた生活をしている乗客もいた。(佐恵子)。ことはそう単純ではないのか。
 また、彼女が翔一に告げた「あなたは記憶を取り戻さないで今の生活を続けたほうがいい」=「現実を知らず幻想に生きたほうがいい」。実は翔一くんは成り行きで榊に過去を尋ねてるだけで、本当は今の記憶喪失生活を優先しているので図らずも彼は既に幻想の中で生きていると得るのでないか。そして、幻想の中で生きている翔一くんは今の所なにも差し支えなく生を楽しんでいる。その差し支えのなさが今後の波乱を予感させる…。


アギト&アンノウン
 今回は二人のライダーの怪人各個撃破もあり大変見どころがある。そしてアギトもギルスもどちらも危なげなくアンノウンを倒す。直前に二人の実力を改めて見せるこの戦いがあるため三つ巴がハラハラするのだ。アンノウンの杖攻撃を巧みにいなしてカウンターをうちこむアギト、アンノウンに首を掴まれても返し技などを使わず力づくで外して反撃するギルスと両者のアクションの対比も効いている。直接対決においても、攻撃を防がれようがかわされようがお構いなしに攻撃を続けるギルスのパワーと、それに押されながらも確実にいなしていくアギトの体捌きの対比が光る。
 また、G3についても、ギルスへの銃撃は効くが接近を許すと押し負けてしまうという超人二人との差別化もしっかり行われている。
 一際見事なのがアギトのギルスヒールクロウへの対処だ。この作品世界では刃物は一撃必殺だと以前書いたとおり。それを如何にかわすかのアクションに置いて足首を横からの叩くことでクロウの軌道をそらすというアギトの“技”だ。それでいて、かわされたことに対して動じず力技で次のアクションに入るギルスの“力”もまた見事な演出だ。

 さて、誤解によって戦うアギトとギルスだが、この回は単なる勘違いと言われると少し違う。この時点ではアギトもギルスも互いに正体を知らないどころか、“人間が変身しているという発想”すらない。しかもご丁寧に作中世界ではアギトとギルスは明確に別物に見えているらしいことが示唆されているので、相手ももしかしたらという発想がすぐにでてこないのが自然なのである。なのでギルスにしてみれば榊の死体の近くに怪物がいるようにしか見えないし、加えてアンノウンが死体をどう扱うか知らないのでアギトが死体を置いただけとも冷静に見られないものやむをえないのだ。
 しいて言うならこの頃の平成ライダーは戦闘が終わるとすぐに変身を解いて役者が芝居をするのでいつまでも変身しているのが強引な…。と思ったが見返してみるとアギトに限っては変身を解かずに去る場面が意外と多い。序盤にG3に問いかけられた経験から正体を知られないように変身をしたままその場を去る癖がついたのだろうか…。
 いずれにせよ、お互いが変身後の姿のみを知っており、“そういう姿の怪物”として認識している状況なので事態はそう単純ではないのだ。


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