フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第27,28話

この作品における「力とは?」が言語化される回。基本的に説明台詞がすくなく、ドラマで見せる本作においては珍しい。折り返し地点なので一旦整理する意味合いだろう。

翔一
 記憶を取り戻した彼は姉の自殺を受け入れられないなど普通の人間に近い精神性を持つのが見て取れる。やはり翔一は記憶を奪われたことで超人然となった、改造人間なのである。
 今回の記憶を失っている状態での「旅行にあまり興味がない。どこにいても地球の上」という発言が興味深い。これは発言内容は葦原の「どこへ行っても現実(自分の世界)は変わらない」は同じだが、ポジネガのように見方がちがう。まさに後述する沢木の言う見る対象は見方によって姿を変えるという一例であろう。

葦原
 相良に超能力で襲われても部分変身まで対処し頑なに力は使わない彼。頑なまでに人間であろうということか。
 28話は回想となっておりそこで語られた彼の人生観・世界観、「現実は嘘にならない」からこそ進み続けなければならないのだろう。しかしそれでいて少年の言葉を全否定はせず逃避行に付き合ってあげる度量もある。12話における、湖での翔一との生き方に関するやりとりからも見て取れるが彼は基本的には個人主義であり他者に干渉されたり、他者が第三者に押し付けているところを見たりしない限りは一応は尊重するのだろう。 
 しかし、今までの彼はあかつき号解明という仮初めの目的をでっち上げてでも進もうとするよく言えば忍耐強い、悪く言えば意固地な生き方だから、今回の「逃げることを試したことあるのかよ」という少年の指摘は彼の心にも結構刺さってるんじゃないだろうか。
 また、さりげないことだが時系列的に彼はまだあかつき号の解明を生きる目的にしており体を消耗させてまで無関係な少年を助ける理由はないのだがそれでも守るあたりやはり根は気の良い兄ちゃんなのだ。

あかつき号
 社会の裏で戦うヒーローチームのようにも見えるが、今の所この作品ならではの食事シーンがない。まさに浮世離れした存在だということなのだろう。そういう点からすると、同じ異能の力を持ちながらも所帯じみた、生活臭のする翔一とは対極の演出だ。本作は3人のライダーが並び立っているが、異能の力という視点では地に足ついた翔一、浮世離れした異能集団のあかつき号乗客、そしてその中間に(まだあり方の定まってない)葦原がいるといった図式が見える。
 木野の命令で葦原の殺害を決めた相良。正解の生き方をしたいだけなのかもしれない。


沢木
 人はイメージ以外の一面を持つ。これまでアギト各所で見せられてきたことを改めて言語化したものだ。話数も折り返しに来て一度整理したといったところか。
 人は思いもよらない顔をもつ。司刑事や葦原の関係者たちはまさにそうだろう。氷川にとって翔一の凄さが全く見えないのもそうだ。それぞれは当人がそう見せかけている場合もあるし、見ている側が色眼鏡をかけている場合もある。あかつき号関係者が幻想の中で生きているのだってそうだ。“幻想の崩壊”というのがこの作品の構成要素の一つである。

 また今回沢木から語られた「自我を超越した者が力を制御できる」。これがこの作品における力の見方、ひいては(今で言う)ライダー論に当たるのだろう。この作品は人の在り方をセリフで説明することはあまりないのだが、ここまで言語化しているのは珍しい。
 実際に見てみると、自我を超越=記憶を失った翔一が一番安定して戦えている。力が追いつかない氷川と、強い力に翻弄される葦原に比べてもだ。あかつき号関係者がことごとく道を踏み外したり、するものそう。しかし今の翔一はそういった後天的な理由で戦えているだけであり、やがて己の手に持て余す事態に出くわしたらどうなるのだろうか?
 まさに翔一は自我を立脚するための記憶を失い、後天的に空っぽの仙人になることで自然体でアギトをやれているのだ。ある意味でショッカーの改造手術と同じだ…。
 余談ではあるがHEROESクウガにおいて翔一が既存のなにかに執着し、それによって戦士になり得てないのはこういった状況のifとも解釈でき、本編とも繋がった要素だと見て取れる。漫画の彼は執着する“自己”があるのだ。



アギト&アンノウン
 シーアーチンロード、隠れた強者だ。ギルスは変身解除後の消耗によって衰弱している印象と混同されているが、戦闘自体はいずれも優位に進めている(例外はガス弾で弱った状態G3に追い打ちを食らったときくらい)のだ。横やりや消耗の増加などで取り逃がしたが、高速移動するジャッカルにも飛行怪人であるカラスにもギルスは優位だったのだ。そのギルスを正面から苦戦させている。しかも今回のエピソードは最近戦ったカラスなどより昔であるはずなので、時系列的にも初めてギルスを苦戦させた強豪なのだ。時系列的には過去でも話数的にはこれからアンノウンも強くなってくることを示唆しているのだろうか…?
 さて今回自走したギルスレイダー。今話でスポット参戦した佐藤健光監督が児童向け資料から汲み取って採用したらしい。部位図解(鎧のどこそこが武器になる、アンテナになるなど)は基本的に書籍や雑誌にそこの担当が書くらしく、撮影班は当然ながら把握してないことも多いらしいのだが、今回のように本編に輸入されることもあるらしい。

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