フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:29,30話

 

 巧と木場がお互いの戦士としての顔を知るが双方の怒りの感情により状況は一筋縄には行かない。その怒りというのも単にお互いに相手だけに向けるものではないから複雑だ。

 草加が二人を仲違いさせようとした際に接触したのが巧ではなく木場であったことからも、彼のほうが疑心暗鬼や不安というものに心囚われやすいのは確かだ。巧が草加が心の奥底に何か抱えているのを察知した洞察力があるのでそれを懸念したというのもあるだろう。

 だが、それとは別に木場なりの考えや経緯もある。彼にとってファイズとは海道が変身し非戦派のオルフェノクに戦いを処刑する役目を請け負っていたり、琢磨ファイズが戦いとは無関係(だと思っている)の友人(巧)を手に掛けようとするなどかなり残酷非道な者だ。しかも海道がスマブレから聞いた「ファイズは落ちこぼれのオルフェノクを処刑する」という情報を耳に入れてしまっている上に、巧の戦う行動と表面的には合致してしまっている。しかもオルフェノクは、製造目的を持って作られる改造人間とは違い、どんな人間から発生するかもわからない自然現象だ。ファイズと戦ってるのがどんなオルフェノクなのかなど、ただ交戦現場だけを見てもわからないだろう。結果的にファイズへのネガティブな疑惑だけが膨らんでいく。また、間が悪いのが沙耶の死に怒る巧の「オルフェノク許すまじ」という声を聞いてしまったことだ。巧を訝しむ材料がまた一つ加わってしまう。巧も行動原理はなんであれ、また何か強い思惑があってオルフェノクを狩っているのではないかと思ってしまうわけだ。

 木場はそれまで幸福に生きてきた分、オルフェノクになってしまったことと同時期に起きた裏切られることが印象強く結びついている。だから、オルフェノクという存在全体へ漠然と向けられるネガティブな感情にも、自分個人に向けられるような印象を抱いてしまうような面もあるのではないかなとも思う。

 

 

 

 その一方で、沙耶が喜ばないとわかっていてなおオルフェノクをすべて倒すと憤る巧。無愛想な彼に友好的に接しベルトを託そうとまでしてくれた彼女を失うのはやはり辛かったのだろう。それを押し殺して啓太郎を気遣うのは彼の優しさだが、同時に言い方にまでは気を回せないのも彼らしさだ。

 彼からしてもホースオルフェノクはことある毎に自分に襲いかかる仇敵なわけだが、その正体の木場をジェットスライガーから庇う優しさを見せている。それは彼の優しさが最もな理由だろうが、もしかしたら彼にはオルフェノクという存在に対して(ファイズに対する木場の怒りよりは)余裕を持って見られる理由があるのだろうか…?

 

 怒りといえば、今回は草加もだ。流星塾同窓会で何が起きたか思い出した澤田に言われた失敗作という言葉。それに対して怒りの形相を見せる彼。

 流星塾で行われていた九死に一生を得た子供達を集める行為と合わせればオルフェノクの王を探す計画だったのだろうか?

 

 そういった怒りの感情と対照的に、村上の命令がなくて暇だからと木場勇治を倒すゲームを始めるラッキークローバーの遊興ぶりだ。555中盤はラキクロが動いている印象が強いが、こうして見ると彼らがこの時期に動いている理由付けが見えてくる上に彼らの悪辣ぶりを再認識できる。彼らは村上からの指示はないがそれでもオルフェノク全体のためになにか動こうといった意識はさらさらない。ただ自分たちの力に興じるだけだ。

 彼らの振る舞いはオルフェノク全体のことを考えて動いているとは言えず、やはり種全体を守り立てようとリーダーとしての意識がある村上と独立部隊のラキクロで意識の乖離が見えてきている。以前、琢磨影山は村上は権力を持って変わってしまったと言っていたが、彼が変わったのだとしたら権力ではなく立場による意識によるものなのだろう。

 

 

 

 

ファイズ&オルフェノク

 今回本格参戦となった仮面ライダーデルタ。その見た目とシステムにはファイズ&カイザと比べて差異が多い。それはデルタギアが新しいからではなく、古いからのようだ。たしかに胸部装甲のないところは後続のファイズたちで胸部を守る必要性をフィードバックした結果だろうし、武器も少ない。変身するだけなら誰でもできるところはセキュリティに気を使うところまで至っていなかったことを思わせる。メタ的な事情を言うと、後発のライダーは商品点数をあまり出せないためにこういった形になったと思われるが、それを作中設定におけるシステムの新しさではなく古さとするところにこの作品のエッジを感じる。平成一期の中では商魂逞しい部類の印象が強い555だが武器や強化アイテムを展開するのは実質ファイズとカイザの二人だけであり、増やすだけでなくその辺のブレーキやバランス感覚も持ち合わせているのだ。

 ギミック周りでは旧式であることを見せるデルタだがだからといって劣るわけではないことをデザインで見せている。ほぼ白と黒だけで構成されたあまりにもモノトーンなデザインは掴みどころのない不気味な威圧感を感じる。また、フォトンストリームがファイズカイザ以上に細かくたくさん血管のように走っているところは単純に強力そうに見える。こういったデザインとギミックの組み合わせにより「武器や拡張性は旧いが、基本性能が高い」というベルトの特色に説得力を持たせている。

 北崎という変身者もデルタギアの基本性能を生かした格闘能力の高さを見せつけている。今回は草加ファイズ対ホースオルフェノクの一進一退の攻防や、怒りのカイザが気迫でスパイダーオルフェノクを撤退させるなど、レギュラー陣はその時々のコンディションで勝ち負けが変動する程度には埋めようがある実力差であることが描かれている。そこへ来ると北崎デルタは圧倒的だ。スパイダー相手にもファイズ&カイザは苦戦していたが状況の混迷具合もあったしそこから立て直せる様子も見受けられた。しかし北崎デルタにはファイズとカイザが連携してやっと一矢報いれる程度である。これでまだ怪人態を見せていないのだから、ドキドキするものだ。

 

 もう一つの目玉として出てきたジェットスライガー。しかも同機種対決なのだから、ジェットスライガーの存在を知っていても2台目には驚いたものだ。当時スタッフが言っていたのだが、「ジェットスライガーは大物同士でしか戦わせられない。そうしないと面白くないから」との言葉があった。当時のCGでは普通のオルフェノクやライダーと何度も戦わせてもシューティングゲームにしかならないのだろう。10回の出番より1回のインパクトというのも頷ける。

 登場の仕方が北崎が発した音声入力を聞き取った巧が自分のデバイスでも試してみるというものなのが面白い。オートバジンに乗ってパワー差を埋めたりキックを弾かれた経験から空中でグランインパクトに切り替えるなど、巧はあらゆる分野で最強…というではないが、実戦で機転が利くので事態をなんとかしてくれそう感が強い。そういう意味で、相手の強さも立てつつ打ち勝ってくれる絶妙な強さの主人公と言えるのではないか。