フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:41,42話

 

巧が帰還しライダーサイドはつかの間の安泰。そしてオルフェノクに関する新たな視点を持つ人物の登場

 

 

 ついに帰還した巧。照れくさくて帰ることが出来たと直接的な言葉にはできないが、「今度タダでクリーニングしてやる(=菊池家に帰った)」と伝えるたっくんとそれをすぐに察し安堵する木場さん。いつもだったら照れ隠しに反発するだろう遊園地も、皆と一緒に楽しんでいる恩義と嬉しさを噛み締めているのだろう。

 自らがオルフェノクであることを受け入れた巧は木場と一緒に沢村刑事に接触。木場も今回は警察がなんらかの意図を持って長田を攻撃していることを察知したり比較的冷静な場面が多い。やはり巧という同志を得た心強さがあるのだろう。

 

 そして巧の帰還を願った菊池家家主の啓太郎。おそらく啓太郎はここ数日にオルフェノクの発生プロセスを帰ってきた巧から教えられたのだろう。メイン人物がこの時期になるまで怪人の発生を知らないという情報の移動の差が面白い。悪気なく「俺たちもそのうちオルフェノクになるかも」という疑問は今だからこそ口にする意味がある。それを聞いた真理はその可能性に恐怖しているからだ。やはり彼女は巧への恐怖はなくなってもオルフェノクという存在やそれになってしまうことへのそれはあるのだ。

 対照的に、ここで目を引かれたのが自分たちがオルフェノク化する可能性をあっさり口にし、なんでもないかのように振る舞う啓太郎。巧がオルフェノクであることを通して肌感覚としての恐怖が薄まってきてるのだろう。

 こういったところで巧という見知った存在に抱く恐怖とオルフェノク全体への恐怖は彼らの中で別物になっており、なおかつその2つの折り合いの付け方が個々人で異なるのが見て取れる。

 

 

 一人、巧の帰還に反発するのが草加だが彼の心情もよく見ると少しばかり複雑だ。まず、巧と三原に対し嫌味を言う前の「君たちが決意をしたのはめでたいが」という前置きに嬉しい本音が漏れてるように見える。特に巧がオルフェノクであることについてはもはや三原がまた弱気になる懸念と(内心では)同程度の重みしかないことを吐露しているようなものだ。「いつ人間の心を失うかわからない(=今はまだあると思っている)」というセリフからもそれが伺える。

 ただ表面上は嫌っているので巧たちが楽しそうにしているのは気に食わない。だからわざわざ遊園地についてきては嫌味を言う。しかし、序盤の彼なら楽しそうに取り繕うくらいはするだろうに堂々と椅子に横になってふて寝とは、段々孤立してきて彼もそれを受け入れてしまっているのが見える。

 

 

 新たな局面のきっかけとなった長田。意外と自己主張したり、冗談を言ったり明るくなったように見えるがやはりかつてのトラウマがあるのだろう。大勢の人間に囲まれ視線を浴びることは彼女のかつての辛い記憶を呼び起こす。だからオルフェノクの身体能力で警官隊から逃げることよりも攻撃することを咄嗟に選択してしまったのだ。

 それでも仲間を守るために自首するのだが、その気持ちは南に裏切られ木場の激昂を呼び込んでしまうのだから皮肉としか言いようがない。

 

 

 今回トラブルの一端となった海堂。「根はいいやつ」というキャラに対し「じゃあ根以外はだめなんですね」を表出させていく。元々ちゃらんぽらんな態度でも啓太郎などのお人好しならまだ気長に付き合ってもらえたのだが、今回のような緊急事態では木場や長田の呆れを生むだけに終わる。

 

 村上の言葉によりベルトはオルフェノクを倒し、王を守るためのものだという説明がなされる。王を守ることとオルフェノク(同族)を倒すこと一体なんの関係があるのだろうか。そもそもベルトは村上が作ったものではなく花形が作ったものだ。孤児たちとベルトにもやはり何かの関係があり、それがオルフェノクと戦うことに繋がっていると言えるだろう。

 

 今回登場した南雅彦オルフェノク論。「オルフェノクも人間だという風潮が広まると人権などの観点から彼らへの対処が面倒になるから、人間っぽい部分を消して怪獣扱いできる風潮を広めれば単なる害獣駆除として問題を単純化できる」っていう切り口から彼らと戦おうとしているのが合理的ではあるがこれ以上なく冷酷だ。

 これは怪人の個別の能力攻略とは別の部分で凄い描写だ。「大手を振ってオルフェノクを殺傷できる風潮があれば、ちまちま能力攻略なんかしなくたって物量ですりつぶせるんだから、まずはその基盤づくりをしようぜ」というわけだ。

 勿論普通はオルフェノクから超常の力を取り除くのがまともな発想だし、南のやってることは一見回りくどく見える。しかしオルフェノクを人間に戻せたとするとそれはオルフェノク時代にも人間性があり、そんな存在を武力で制圧・鎮圧していいのかという世論が起ることを南雅彦は危惧しているのだろう。今はオルフェノクを一人ひとり捕獲して機械に繋がなければどうこうできないが、いずれは街で暴れるオルフェノクに、例えば特殊な弾頭を撃ち込んで人間の部分を消失させて市民に彼らの人格を認識させないうちに害獣として駆除する…と言ったビジョンを抱いているのかもしれない。

 この時期の平成ライダーは一作ごとに見せ方ややることを大きく変えており、そのための引き算も大きくそれまでにやったことはやらないというものもある。555では巧が咄嗟の起点や格闘戦の技巧・駆け引きで勝つが「あのオルフェノクの能力は…」といった攻略エピソードは少ない。これはクウガ龍騎との差別化ではあるが、それに加えて南雅彦という人物を出して「そもそも天下の往来で物量戦やれる基盤を作れば、少人数こそこそ能力攻略なんかしなくてもいいわ」という身も蓋もないことを作品内で切り込んでくることになったのがまた興味深い。

 

 

ファイズ&オルフェノク

 冒頭のライダー3人対ラキクロ3人。戦闘経験は浅いが基本性能の高いデルタにドラゴンを足止めさせておいて、ファイズカイザはエビムカデを早めに撃退。そこから即三人がかりで対処する。相変わらずのプライベートの仲の悪さに反しての連携の良さだ。使われたのが出の早いグランインパクトというのも技の性質を生かしている。拘束ビームを撃たないグランインパクトは単体で使っても見栄えとして他の技の下位互換にしかならない。スタッフもそれは認識しているのか、グランインパクトが成果を上げるのは(初登場を除いて)こうした連携の中に組み込まれたときだ。もちろん三原デルタの射撃によるアシストも見事だ。今の自分の力量からできることを瞬時に判断し貢献している。

 これまでもブラスターでドラゴンを撃退することはできた。だがここではブラスターではなく3人の連携で撃退する重みがある。

 

 やはり花形はベルト制作時、通常オルフェノクの強さの上限を北崎や自分を据えたのだろう。その上で彼らと戦うために必要なのは3本だ算出した。だから3本揃えればどんな通常オルフェノクにも勝てるわけだ。

 そして村上が言うラキクロは四人揃ってこそというのは「ベルトが3本束になればどんなオルフェノクにも勝てる。であるならばこちらはせめて頭数だけでも上回ってライダーを分断して戦わねばならない」ということなのだろう。問題は現ラキクロ当人たちは、上等な自分たちの仲間に入れて遊んでやるからには楽しませてくれる奴でなくてはならないという気構えであり、連携の重みを考えていないところだ。

 

 

 今回のゲスト、フリルドリザードオルフェノクエリマキトカゲを模した盾が特徴的だ。剣と盾の2つの武器を生成できるあたり、タカ派オルフェノクの中では中堅程度の強さはあるのではないだろうか。だが今の時期のファイズカイザ二人を相手にするのは荷が重い。実際最初はそれなり持ちこたえていたのが、この二人の見事な連携で順次武器を弾き飛ばされていってしまった。

 

 もう一人のゲスト、クラブオルフェノク。人体実験で改造されてしまったようだが、人工部にも色がついてないのが寂しげで良い。それでいて本体とは微妙に色味の差異があり改造部分が遠目にもわかる。

 今回巧がオルフェノクを庇ったとカイザが怒るが、ファイズは努めて冷静に話をしようとしている。今の二人ならお互いの腹に抱えているものを知っているはずなのでそんなに長引く争いではないことが目に見えている。