フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:45,46話

 

巧と木場が道を分かつエピソード。

 

 

 度重なる人間への失望によりとうとう敵対の道を選んでしまう木場。長田へトドメを刺した影山だが、そこ至るまでの過程の大半は人間の手によるものなので長田は人間の手によって死んだというのは間違いない。また、澤村刑事など自分達の味方と思った人間まで南の行動を止めなかったように見えたのもあるだろう。そういうものが積もり積もっての敵対だ。もはや最後のひと押しの犯人が誰であったとしても木場の敵対は避けられなかったであろう。唯一、現場を見たわけでもないのに「人間が手を下した」という想像を選んだのは木場の意思だが。しかし前述の通り、これまでの体験を受けて、ピンポイントで「あの部分だけは人間の犯行ではないかも」と考えよというのも難しい話だ。

 

 そんな木場をスマートブレイン社長へと後押しする花形。彼の真意はむしろオルフェノクが攻勢に出ることを止めることだった。となると彼は木場の内心の変節を認識してない。木場の南殺害をオルフェノク全体のための純粋な義侠心からやったと思ってすらいるのだ。彼はそれほどまでに木場に期待をしているのだろうか。確かに木場の行動を外から見れば村上一派に命を狙われ続けて今日まで生き延びているわけで、流星塾生以外で戦力を見込むとしたら彼らだろう。しかし、花形が行動を起こす僅か数刻前に木場は人間を見限ってしまっていたのだから、哀しいすれ違いだ。

 

 

 

 もしかしたら海堂の照夫への甲斐甲斐しさは元からの面倒見の良さもあるが、そんな木場がいなくなった寂しさや、長田を突き放した後ろめたさが混在しているのではないか。

 

 

 

 

 一方でライダーサイドにも彼らに厳しい展開が待っている。長田の死を察しつつもそれを口にせず彼女の幸せをねがう啓太郎と、啓太郎本人がその死を口にしない以上は自分も長田の死を(表面上は)認めるわけには行かず、心のなかで謝ることしかできない巧。どちらも他者を思いやっている。  

 巧が明確に慰めの言葉を口にしないのは、前述の通りそれを言葉にしない啓太郎の意志を汲んで「長田は今もどこかで生きている」という体裁を取っているためだ。そこでもし巧が守れなかったごめんなどと謝罪を言葉に出そうものなら、それは啓太郎の意思を踏みにじり自分が楽になりたいだけの行為になる。それをわかっているから巧も黙するのだ。お互いを認めあっているからこそ痛ましい様相だ。

 

 父について話す草加と真理。父がオルフェノクであったことは真理には知らせずただ彼女と思い出の中の父について話す。自分が見てきたものの中でどれが現実なのか思い詰めているのだろう。しかし、きっとそのどれもが等しく現実なのだ。人には様々な側面があるだけで。きっと良き父としての顔もベルトを強奪した顔も、地下でベルトの人体実験していた顔も、北崎から自分を助けてくれた戦士としての顔もすべて。

 据えるべき軸が見えず苛立つ草加は「オルフェノクならすべて敵。父親でも倒す」とまで言い放つ。周りがオルフェノクと和解する中で更に頑なになっていることからしても、「自分が殺めてきた相手に心と命があるなんて今更受け入れられるか。」という心情なのだろう。今更一つでも例外を作ってしまったら自分の正当性が揺らぐ、だから俺はオルフェノクならば親でも倒さなければならないと言っているのだ。

 

 そんな花形と村上。彼らは最初からこの回に至るまでどちらも一貫して「孤児」を鍵と見定めて動いてきた。同じ事実にたどり着きながらも戦いを放棄したという前者と戦いを選んだ後者。同族にとってヒーローなのは後者だが…

 

 そして今回明かされた照夫の正体。それはオルフェノクの王。上述した通り王は孤児に宿る。というか、本来なら死ぬような状況でその子だけ生き残れるから結果的に孤児に宿ってるように見えるだけかもしれない。

 いずれにせよそれを村上も花形も探していた。流星塾も王を探すための候補の飼育ケージに過ぎなかったのだろうか?

 王はオルフェノクを食ってエネルギーとする。王の眠りは深いとはこういうこと。だからオルフェノクからも従わない者が出てくる。ファイズギアはオルフェノク側が作りながらもオルフェノクと戦うための道具なのはこういう理由だったのだ。そう考えると、初期の数話で村上が真理と巧からベルトを没収するために言った「オルフェノクと戦うため」という建前も絶妙に嘘は言ってないことになる。

 まあだからといって、部下に生贄になるべきだと言った村上もどうせ自分が食われるときは拒むに違いない…!

 

 王の目覚めが近いのを知り、俄然やる気を見せる村上だがそんな折に社長を退陣させられてしまう。その理由は大義名分としてはどれも尤もなもので、スマートブレインも知的生命体の集まりなのでそこで物を言うのは権力とルールの使い方。いくらローズオルフェノクとして腕っぷしが強くてもそういう場では意味がないことが描かれているのが面白い。

 ラキクロとの力関係もそうだが、オルフェノク全体のためを謳っておきながら力で物を言わせては大義名分と求心力を失うことを描かれている。

 

 そこへ行くとオルフェノクとはいえ仕事の伝達や調整といった部分は文官的労働を求められるので、そういった場でふざけると北崎といえども注意されるのがなんだか可笑しい。

 

 

 

ファイズ&オルフェノク

 ブラスターフォーム対バットオルフェノク。身軽な戦いが特徴のこれまでのファイズと対照的にどっしりと構えた打撃戦で確実に敵の体力を削る。

 それに対し人質をとることで逃げおおせるバット。機転が利くだけでなく弱っているとはいえホースを抑え込むパワーも見て取れる。

 さらにはスネークオルフェノク、デルタとレギュラーキャラを次々ノックアウトしつつ、最終的にはアクセルフォームの多重キックを引き出したその強さ、そしてプロレスの上手さはまさに名ゲスト怪人と言えるだろう。普段は人の良さそうな男なのがギャップを生む。

 

 また、レギュラーオルフェノクの戦いも見事だ。最近はブラスターフォームや3本の総力戦に押し負ける場面のあったドラゴンだが、やはりライダー二人では押し込めない強さも見せる。この「対処法は確立して雲の上の存在ではなくなったが、それでも気合と力押しだけでなんとかなるほど甘くはない」感が厳然と有る。

 さらにはそんなドラゴンのパワーとスピードを、見切りと体術でいなすゴート。これまでも琢磨ファイズに対し強さを見せていたがドラゴンさえ上回るのは驚きだ。それも特殊な能力で初見殺しをするというより、前述の通り卓越した格闘技でドラゴンを悠然と迎え撃つ強さがすごい。

 

 前社長が強ければ現社長も強い。今回は照夫を奪いに来たため、特殊能力で翻弄するような戦いはせず真っ直ぐに進軍してきたローズオルフェノク。デルタのパワーに組み付かれても引き剥がし確実に打撃を打ち込む。ファイズとデルタが二人がかりで来ても二人の打撃を確実に捌き、カウンターパンチを打ち込む。ジェットスライガーを呼ばれればすかさずベルトを奪い、敵の頭数を減らす&戦力を奪うという一石二鳥な手を打つ。ドラゴンオルフェノクのように一撃でライダーを吹き飛ばすほどの腕力はないが、力と技がバランスよく纏まって隙がない。

 

 それらの戦いの前座となったコーラルオルフェノク。なかなかのパワーファイターでファイズとデルタ相手に腕力で手こずらせている。デルタのキックで弾き飛ばしたところにファイズのパンチでトドメ。この描写からするに腕力と耐久力は上位のオルフェノクであり、そんな相手を一回の戦闘で仕留められるような連携ができるほどに打ち解けた巧と三原という描写にもなっている。

 そんな強敵と、それを破る二人の連携でも敵わないのがその次に出てくるローズという見せ方が簡潔。

 

 

 またもう一つアクションで気になるのが、ファイズフォンを掲げずに変身するようになった巧だ。おそらくファイズへの変身にあのポーズは必要不可欠なわけではない。しかし、古来より戦いや狩りに際して、恐怖に打ち勝ち己を鼓舞するために踊りや特定の型の動きをする習慣が世界各地にある。変身ポーズに己を鼓舞する意味があるとしたら、今は己を鼓舞しなくとも戦えるくらい、意思と逼迫感が強くなってるのだろうか。もしそれがあるとしたら直前の長田を死なせてしまった無力感・罪悪感が作用していると思われるが…