フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:37,38話

 

巧への処遇を巡って各人物の対立や協力関係が変化していく

 

 木場を頼る巧。やはり、彼にとって木場はオルフェノクであることを受けいれた上で同族と戦える豪傑なのだ。真理や啓太郎は勿論仲間だが、同じオルフェノクという存在で悩みを打ち明けられるのは彼には木場しかいない。

 また、自分を何度か気にかけてくれた影山に対しては敵であっても「もう構わないでくれよ」と語尾が微妙に柔らかくなってしまう人の良さが滲み出ている。

 

 そんな風に信頼されている木場は巧だけでなく真理へも気遣う。オルフェノクであることをオープンにして戦ってきたので、こういったときには精神的な余裕や落ち着きを保てるのだ。それでいてお化け屋敷からは一人で先に出てきてしまうお茶目さが可笑しい。その後に真理の巧への心配が抜けないことを微笑ましく思う動じなさも頼もしい。

 

 

 対照的に現状に翻弄されがちな草加。表面的には平静を保っているがいよいよ啓太郎に対して素の口調を隠せなくなっている。菊池邸でオルフェノクに関する主張を披露するとき、巧への批判というよりその場にいる木場への嫌味のためにやっているように見える。

 巧関連で真理がそちらばかりに慌ただしく動くのを見て、それに伴って彼の心もどんどん落ち着きを失いとうとう蓋をしていた記憶が心の奥底から這い出てきた。草加の手を拭う癖は過去の真理の血。やはり同窓会には来ていたのだ。では、何故彼だけそれを否定するのか…?

 また、巧が流星塾同窓会事件の犯人だと半日かけてほどかけて飲み込んだ様子が窓から差し込む夕日によって表現されているのが上手い。口では巧を憎みながらも、別のある面では信頼しているのがここでも示されている。

 

 巧への信頼を明確に口にする真理。思えば彼女は明確に草加に騙されていたことなどはないのに、彼の口車に乗らないあたり直感がするどい。

 草加に触れられるのを嫌がるのは、前回オルフェノク(巧)に触れられるのを恐れたのとなんら変わらない。好き嫌いに率直だという意味で、誰よりも公平な拒絶感だ。

 

 

 巧の帰還を望むもうひとりの人間・啓太郎は草加に「たっくんはただのオルフェノクじゃないんだ」と噛みつく。オルフェノクの発生経緯を知らないので彼の希望的観測だが、知りうる知識の中で巧をなんとか擁護しようとする優しさか心強い。

 

 画面演出の話だが、今回の冒頭で啓太郎と真理がウルフオルフェノクに呼びかける声や嗚咽がリアルだ。この時期の平成ライダーはこういった部分でリアリティの土台を作っている。

 

 そして第三者に近い立場で巧を見る三原と里奈。三原はその危機意識から巧をまだ怪しんでいるが、デルタギア騒動の前にあっていた里奈は信頼している。この差が絶妙だ。

 

 

 そういったシビアな画面の中で、避けた方に泥団子がことごとく当たる海堂のコメディシーンが清涼剤となる。照夫がレギュラーキャラとなったことで、やはり孤児がなんらかの鍵となっていることが確定した。そういった意味では前社長の花形も村上と同じく孤児を集めていたきな臭さがより一層強くなっている。彼は本当に優しい父だったのか…?

 

 

そしてスマートブレインサイド

 ダーツの場面から見える北崎の一瞬の寂しげな表情。それでいて巧へはこれといった敵愾心も見せず(気まぐれの一環だろうが)気に掛ける面もあったりする。彼の望まぬ能力による虚無感への言及はすべてが嘘ではないことがわかる。彼が続けられるのは壊すことだけなのだ。

 

 

 「人を捨てた側」から巧を救おうとする影山。村上の人事の采配の不備を見透かすところから、やはり冷徹な精神は本物だ。彼女の見立て通り、ここ数話の村上の個人への采配はあまり冴えない。

 

 

ファイズ&オルフェノク

 

 闇夜に光るライダー二人がそれぞれの場面で怪人と戦う。それだけ見ればどちらもかっこいいのに片方は辛い場面に見えるのは、我々が巧の人格を知っているからだ。どちらも命なのに。もしかしたら、ピジョンオルフェノクにもあの立場で戦わねばならぬ経緯があったかもしれぬのに。我々は見える範囲で悲しむ対象の選別をする。

 

 

 そしてドラゴンとローズが初めて他陣営と対戦。どちらもスパイダーオルフェノクを圧倒しただけあって期待(不安?)通りにダブル主人公を圧倒。それでいて木場ファイズとウルフオルフェノクという変則的な形態なのだから今後リベンジを期待もさせてくれる。

 戦闘スタイルとしてはドラゴンが腕力とフォームチェンジを使って相手をひたすら攻めたてるパワーファイト。一方のローズは、ウルフオルフェノクの打撃を全て捌きカウンターを叩き込む技巧派スタイルだ。力のドラゴンと技のローズといったところだ。

 

 

 

 また三原デルタで苦戦した相手を追っ払う巧デルタも苦悩するシーンが多かったこの数話の中で主人公の頼もしさを見せてくれておりますほどよいサービスシーンだ。今までも語ったが、主役ライダーの出演というかなり強度が高いと思われるハードルをこの作品は「ファイズは出てますよファイズは。巧以外が変身してるだけで」とうまくクリアしつつ、主人公が悩む展開をしっかり積み重ねて描くことができる。その上でこのような形で主人公の頼もしさをほどよく補充してくれる、溜めと爽快感のバランスが上手い

 

 そんな巧デルタと戦うバーナクルオルフェノクフジツボをアメフトプロテクターに象るユニークさが特徴的だ。ボールで三原デルタを圧倒するゲストながらなかなかの強さは流石にスマブレの手の者だけはある。そのほどよい強さと殺陣により、木場ファイズは巧より直線的でキビキビとした打撃が特徴的なのがわかりやすく見て取れる。