フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第31,32話

 アギトやその予備段階としての超能力者が複数出てきて、彼らのそれぞれの生き方の違いが明らかになった回。またアンノウンも明確に強くなってきて今後の波乱を予感させる。

翔一
 真魚の質問に対し「誰かをこういう人だと言っても(見えても)そうかわからない」と答える彼。そう、人は思いもよらない一面を持っているもの。今の翔一なら自然体で理解しているが、かつての翔一はそうではなく人への評価に固執していた。こういったやり取りでも記憶喪失前後の人生観の差異を見せてくれる。

 また、真魚の悩みに対し、否定もせずアドバイスもしない。ただ現状を受け入れ、「まだしばらく家出すると伝えて」という伝言を引き受けるだけ。観覧車でもあくまで真魚の現状を言語化し、少し後押しするだけ。翔一が教える、導くというスタンスが薄く、どこか対話法・問答法の相手として真魚に相対しているようだ。彼のスタンスを端的に表している。

 真魚は学校での悩みも相まって風谷事件の犯人が超能力者、ひいては自分が犯人である可能性を考えてしまう。普段の彼女なら強きに突っぱねるだろうが…。
 彼女いわく自分の父親はわかりやすかったというが、本当だろうか?超能力で見通していたのだろうか? 超能力でも透視できていなかったら。もしくは父親を知ったつもりになって見る発想がなかったら。もしくは単に相手を尊重して透視は控えていたら。いずれにせよ、超能力者といえどすべてを見通す万能ではないし、「自分はわかっているはず」という幻想に囚われている可能性だってある。この作品における超能力者もまた悩める存在なのだ。
 そして。真魚にとっての居場所…とは。異能であることを隠しているのは翔一も同じ。しかし、翔一は今まで語ったとおり後天的な仙人になることで気にしていない状態に至っている。そう考えると、普通の人間が異能の力だけを持ったら真魚や葦原、あかつき号乗客のようになるのが多数派ではないだろうか。
 話は変わるが、今回彼女は葦原=ギルスであることを誰よりもはやく知る。(ついでに変身する存在が複数発生することも)彼女が様々な人間関係の起点になっていることがわかり、物語として非常に有機的に連動しているのが見て取れる。


氷川
 北條を思い込みが激しい人間だと思ってるとぽろっと語る。やはりか。
 小沢から受け取ったアドバイスをそのまま伝書鳩のように話したり、小沢の子供時代があることに驚いたり久しぶりの無骨ぶりを見せてくれる。
  

葦原
 溺死させられたはずだが、まだ一部は生きているという。ギルスになったおかげか。しかし肉体的には死を免れていても、彼の人生は苦難続きである。沢木にも「このまま死んでいた方がお前も楽だが」と言われる始末。まさにそのとおりなのだが、それでも目的のために蘇生されるのは…。
 だがそれでも他ならぬ葦原自身が探していた“生きる目的”のために蘇るのだとしたら彼の生きる希望に一縷の望みはある…とみて良いのかもしれない。いやあんまり自信はない。
 彼の力の話になるが、今回、力の反動で真魚の腕が老化した。ギルスとはこの超能力者の負担が残ったまま変身能力に移行してしまった存在なのかもしれない。さながらネオテニーなのではないだろうか。

あかつき号
 真魚が自分のところに戻ってくるという相良。それは異能には日常の居場所などないという諦観か。相良は落ち着いた生活を望みつつもどこかでそれはできないことを悟っていたのだろうか…?
 ただ同時に、大いなる目的のために真魚を巻き込んだと話す相良だが最期のやりとりから実は同じ境遇の同族が欲しかっただけなのではないか。真魚が同じ異能の翔一という仲間を得て受け入れているのと本質は同じなのではないだろうかとも思う。ほんの僅かな環境の違い、ボタンの掛け違いで彼らは命を落としていった。
 アギトという作品において古いタイプの生き方をする異能は死んでいく。それは作品のテーマとして明確なことでありしっかり芯が通っている。のだがそれでも哀しい。彼らは彼らなりにあがいているだけなのでもあるのだ。

 前述の通り、真魚を巻き込むことに引け目を感じる相良と、それを安っぽい同情と断じる沢木。沢木も人間やアギトを助けるために動きながら、彼らの有用性・強さを証明するために犠牲もやむなしといった姿勢になっているように見えるが…。彼自身が言ったように、人間沢木は死んでしまったのだろうか?
 今回初登場した真島くん、浮ついた言動も多いが真魚が身体の不調を訴えたりしたときは真っ当に心配するなど根は良い人…?自分が特別な力を得たらどうするか、最も子供っぽい、しかし自分に素直な欲求だ。すごい力を得たら見せびらかしたい。一番ありそうで、この作品にはまだ出てきてなかった欲求だ。

 

アギト&アンノウン
今回カニとオルカの会話のようなものが見られた。アンノウンが横の業務連絡をするのは珍しい。文字通りアンノウンな彼らの珍しい場面
その理由は関谷の中になんらかの存在がいたから。これまでアンノウンは流暢に喋るということはしなかった。関谷の中にいるのは少なくとも普通のアンノウンではない。

強さがましてきたアンノウンだがその強さの描写も個体ごとの差異が描かれていれる。
カニ:格闘ではアギトも打ち返しているが甲羅の防御力で苦戦→ちゃんばらの得意なストームフォームならより押し込めるが甲羅の硬さを突破しきれない→トルネイダーとの合せ技で撃破
オルカ:真正面からの格闘でアギトを圧倒する。
といった強豪度合いが段階的に上がっているのが見て取れる。わかりやすい口癖等がないため一体一体のインパクトは薄い人アンノウンだが、こういった強さに関しては細やかに描かれている。
 特に今回のオルカロードは何者かの指示で動いているためややもすると格下感がある。しかし、だからといって雑兵ではなく正面からの格闘でアギトを圧倒するという強さをも有している。と、同時にこれだけ強いオルカを顎で使える何者かの異様さもまた感じ取れるのだ。ラストの戦闘や予告からはギルスがパワーでならなんとか対抗できているようだが果たして…?