フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第35,36話

アギトであることやこれからのアギト問題に触れられ、あかつき号の謎だけでなく未来へも目が向けられる回。

翔一
 自分と葦原以外のアギトの存在に言及する翔一。そこに不安やネガティブな感情はなく純粋に仲間を見つける喜びを見出している。アンノウンや自分以外のアギトのことなど露とも考えなかった彼だが、かつて一度記憶を取り戻したときのようにそういったことを気にしている。しかし、そこに垣間見える感情はかつてと異なる。その気のかけ方はいつものように底抜けに明るい。アギトに無関心でもなく、かといって気を病んでしまうような悩み方でもなく…といったところだ。これは自己に執着する状態とそうでない状態が止揚しているといえるのかもしれない。
 沢木の言う「自我を超越する」だけでなく、愛すべき自己や人生を抱えながら新たな段階へ登っているのかもしれない。アギトであることにもポジティブに関心を持てるようになったのだ。

真魚
 葦原への礼に出向いたり翔一に彼への恩義を強調するなど、対人関係でのこまめな気配りができるようになっている。朗らかな性格は変わっていないが、さりげないところで成長が見える。


氷川
 超能力者がアギトになるに可能性に言及する小沢。やはり彼女はいつも視聴者へ半歩先の発想や可能性を示唆し、番組視聴の導線を引いてくれる。単なる武器開発博士ではなくそういったところでも、天才らしい柔軟性や思考力を見せてくれるし、それを視聴者への助けにも使ってくれるのだ。また、そこで被害者の数からアギト予備軍の数に考えを巡らせる尾室も冴えている。彼もまた確かな地頭はあるのだ。

 この2話に渡っては氷川は北條との良いやり取りをみせてくれる。ついでに言うとここら辺りまで来ると氷川対北條というより、氷川(息子)の教育方針を巡って張り合う両親のようになっている小沢と北條の図も見えてくる。
 北條も小沢と同じ考えに到達するだけでなく、氷川のあかつき号の乗客についての話から単なる事故への恐怖と決めつけず別の可能性も思慮している。北條も司の件を経て、G3そのものへの執着を手放せているように見える。人への配慮を身に着けた小沢に負けず彼もまた変化しているのだ。
 そんな風に成長した北條の良い相互作用を示すようにあかつき号の真相解明に協力し合う氷川。現場の刑事としてはこの二人結構いいコンビになれるのでは…?

 またここでアギトの脅威性を話す北條。そのとおり、今目撃されているアギトやギルスがどんな仕打ちを受けても人間に害をなさないのは彼らの善意に完全に依るところであるのだ。さらに言うと人間側にとっては純粋な幸運でしかない。また、うがった味方をすればアンノウンと戦うのも同族を守るためにすぎない、ともとれるのだ。



葦原
 真魚に自分やあかつき号に関わらないほうがいいと言いつつも、翔一は含めない彼。翔一の温かさを短い同棲期間で見抜いているのだ。また、木野の指示であかつき号の乗客に殺されたことも「おかげでひどい目に会った」で済ませているのも、翔一に負けず劣らずお人好しと言える。篠原佐恵子の一件のときのように元々他人の考えには一定の理解と距離を置くが、それに加えて落ち着きが出てきている。
クロウロード戦でのセリフといい、翔一を守るために戦う経験が彼自身にもいい影響を与えたのだろう。あかつき号の謎もそこまで必死に追わず、翔一との連携や真島との談笑を優先している場面も見られる。
 ちなみに現時点ではまだ「力には目的がなければ意味がない」と言っている。執着は薄れてるがまだ目的の必要性を感じてはいるようだ。

あかつき号
 今回登場した木野さん。あまり喋らないためどんな人柄かは真島の信頼を通して描かれることになる。あれだけ自分のためだけに変身したいと言っていた真島があっさり木野のサポートをしたいというあたり、まさに高潔な人物だがよくよく考えると彼があかつき号の仲間に葦原殺害を指示していたわけだ。その両方の事実を視聴者は知っているわけで、それによるもやもやとした不安感がが真魚同様に感じとれるのだ。
 また、そんな木野がアギトの力を使いこなしている(ように見える)のは、翔一のような無我とも違い、あかつき号の以上のトラウマ(雪山での遭難)で押さえつけるという力技によるものではないだろうか…?ポジティブになるのではなく、ネガティブな感情をより強力なネガティブで塗りつぶしているのだ。あかつき号の事件の恐ろしささえ押さえつけられるほどに。
 翔一と葦原の会話で出てきた「人を守る」という発言に動揺する木野。もちろん彼の目的の障害となりうるという意味もあるが、(氷川の項でも書いた通り)そもそも異能に変身できるからといって即人のために体を張ろうとは思える人のほうが少ない。それ自体にも驚いているのだろう。
 それと木野はサングラスをここぞでこそ“かける”。目線を隠す。アギトにおいては本心を見せなかったり、自分でもわからない人物はたくさんいるが、このような形で本心を見せないのはありそうでなかったパターンだ。

 今回、真島のピンチにわりと都合よく現れた葦原だが、存外真島に会いに来ていたのかもしれない。真島のなんだか放っておけない危なっかしさや純粋さもまたある意味で人を惹きつける形のひとつなのだろう。彼自身、多少突っ張っているものの、真魚の世話をしたり人柄の良さを垣間見られる。

アギト&アンノウン
 フィッシュロード、殺陣を見ると腕力はギルスも互角だが硬さで優位に立って競り勝った印象。硬いのは魚のもつ“鱗”のイメージからだろうか。
 そんな魚アンノウンを悠然と下すというインパクト十分なデビュー戦を果たすアナザーアギト。その戦闘スタイルは的確に交わしてカウンターを叩き込む、と書くと字面ではアギトと同じだ。しかし、アギトがどこか緩やかな印象を与えるのと対照的にアナザーアギトの回避の動きは彼の領域に他人を入れたくないような、そんな頑なさが見える。
 必殺技のときに口が開くのはギルスと似ているがアナザーアギトは吠えたりはしない。相手に向かって(歯を食いしばるような)口は開くが、しかしそれでいて意思を窺わせない。まるで木野のようだ。

 あとさり気なくアナザーアギトのアンノウンの感知音(?)がアギトと異なる。個体差か。

 36話のクロウロードは最終的にはギルスに撃破される。よく考えたらアギトのバーニングフォームは数話前に出たばかりで所謂販促期間なのだろうが、ここで葦原の心情を表してギルスのトドメにするあたりこの作品は(ヒーロー性をしっかり出しつつも)作品性も尊重していることがわかる。今回は強い個体なのか、以前の個体と違ってギルスと互角に渡り合っていたが最終的には彼に倒された。ギルスは鳥と相性がいいジンクスでもあるのだろうか?


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