フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダーアギト感想:第29,30話

29.30話
翔一と氷川の掛け合いを始め、ギャグ要素の強い回だがいくつか重要な要素も明かされている。

翔一
 記憶を再度失った意味、それは今の彼に解決すべき課題があるということなのだろう。記憶を取り戻して昔の彼に戻ったとしても、それは視聴者にしても知らない存在だし物語が始まる前にいなくなった存在が画面に加わるわけである。
 そうではなく、記憶を失ったおかげで戦えている今の翔一が視聴者とともに歩み、直面しなければならない問題があるということだ。記憶を取り戻して万事解決したとしてもそれは我々の知らない津上翔一が問題を肩代わりしているに過ぎない。
 しかし見事なのが一連の記憶の復活と喪失における翔一の描き方。わかりやすく人当たりや物腰が変わるというわけではないが、よくよく見ていくと物事に対する考え方が異なるのが見えてくる。

真魚は超能力の件を氷川にしか話してないがため針のむしろに。ここで北條のいう暴走を加味しても真魚が犯人である可能性が浮上してきた。本作はこのように情報量や認識が常に変化していくため、このキャラならいつも安心といった味方はできなくなっている。しかも今回沢木に彼女までが力を急速覚醒させられた。これからは彼女もまたより直接的に戦いに巻き込まれてくことだろう。
 また、展開上学校の悩みで精神を落ち込ませることで、いつもの彼女なら突っぱねて否定するであろう可能性を受け取ってしまうことを補強している。

 しかし風谷事件で翔一、真魚、氷川、北條が揃うシーンはこの作品を象徴していると言っても過言ではない。それぞれが秘匿された事情を持ち、それぞれが断片的にその場の誰かの情報を握っている。そしてそれにより認識や発想に差が生まれている。  平成ライダーではしばしば安直に「全て話し合えば全て円満に行くのだ」と言われてるが、ここでは現状認識・知識(の差)によって、そもそも何をどこまで話せばいいのかすらわからない。相手が何を知っているかもわからないし、知っていたとしても同じ解釈でいるとは限らない。勿論自身の身の安全の保証も含めてだ。

氷川
 翔一の前でテニス準優勝の事実をしたり顔で開示する彼。やはり捜査中にまとわりついてくる翔一に日頃鬱憤をためているのだろう。何度もガッツポーズを決めるシーンは派手なギャグ演出がなくとも普段のやり取りの積み重ねから笑えてしまう。
 思えば真魚の超能力の秘密を握っているのは氷川であり、翔一くんは知らないわけで、その点でも精神的な余裕や優位は生まれそうなものだがそうならない(考えが思いつかない)あたり武骨というか純朴だ。  
 ただ風谷事件の犯人が超能力者である可能性を北條が示唆したとき、真魚を慮って周りにバレないようにその可能性を取り下げようとした立ち回りはうまい。手先は不器用でもその辺の立ち回りは第一線の刑事だ。

 そして北條がなんだか吹っ切れてる。司の一件で色々吹っ切れたのだろうか。その上で、g3ユニットには絡んでくるから、根っこはそう変わってないのだが。君のままで変わればいい、ということかな?
 

沢木&あかつき号
 相良に過去を見るなと制す沢木。正論だが精神の均衡を欠いた相良たちには酷だ。そもそも彼があかつき号乗客の覚醒を促しても今の所、皆非業の末路を辿っている(しかも死因がいつの間にか葦原のせいだとあらぬ誤解が生じてるのも含めて)。沢木の心もまた人間のままなので彼の力の使い方もまだ「自我を超越」できてないということだろうか?
 彼は超越的な傍観者などではなく、彼もまた力に翻弄される一人なのであろう
 そして、多くの人物と同様に相良もまた過去に固執している。しかも葦原を木野なる人物の言葉だけで彼を犯人とし殺害した。一度は助けたのにだ。一見常識的に生きている彼もまた生きる指針がほしいのだろう。それを他者に求めているのだ。だから一見傍から見ると支離滅裂な彼の行動も彼の中ではより安心して生きる寄る辺を求めているだけなのだ。




アギト&アンノウン
 相良の台詞、黒い青年のセリフから超能力者がアギトになることが示唆された。また青年は人を愛しつつも「人の中の人でない部分」を嫌悪しているという。彼らがアンノウンを動かすのは人でない部分を持つ人間。ということは彼らはやはり破壊衝動や力による征服を企んでいるわけではない。
 その上で今週の話を見ると犯罪者でもアギトに覚醒する。ということはアギトの力には善悪はなく純粋な道具・身体的特徴にすぎない。現状確認されているアギト、ギルスが人のために戦ってくれるのは幸運に過ぎないのだ。
 にしても、沢木に「ギルスもアギトの一種だ」と言われたときの、明らかに予想外の返答を受け取ったような相良の顔。関谷のセリフといいますますギルスはアギトとも異なる怪物に見えているのがわかる。人がギルスに変身するという、アギトと同じ現象を目の当たりにしても沢木に言われるまで別の怪物だと思いこんでいる。単にギルスが怪物に見えるという以上にアギトに対して、他者と一線を画するなんらかの思いを持っているということなのだろうか。かつての篠原佐恵子と同じようにアギトを恐れつつも、同時にアギトになにかすがるような屈折した思いをも秘めているとか…。

フィッシュロード戦で見事な連携を見せるアギトとG3。普段お互いのかけている色眼鏡を通してだと張り合ってばかりだが本質はそればかりでないことを示している。普段は一面的に見て軽んじあっている二人が気づかぬうちに互いを認めあっている。人は思いもよらぬ一面を見ているのだ
 しかし、魚もカニもどちらもアギト&G3X二人がかりを相手に渡り合っている。前回でギルスを初めて白兵戦で苦戦させたウニといいここ数話でアンノウンが強くなってきているように見える。しかもどれも水棲生物だ。放送時期が夏だからと言うこともあるが、もしかしたら今後の展開の布石にもなったり…?
 ただ単純に苦戦しているだけでなく見所もある。G3-Xの格闘能力だ。かつてG3時代だと打撃戦でこれだけ食らうと、被弾部位が機能停止や出力低下で(設定上の防御力はどうあれ)継戦能力に支障をきたしていた。それが今回はアギトとほぼ同様に食らいつくことができていたのだ。勿論攻撃力や俊敏性をいきなりアギトやギルスと同等にすることは難しいが、少しずつ彼らの領域に踏み込んでいると言えるのではないだろうか?



しかしまあこの作品のリアリティで怪盗などという言葉が出るとは改めて驚きだ。井上敏樹氏が書くと水落ちするだとか言われるが、それらは現場の裁量であり特にそうではないシーンも多い。それよりも氏が登板したときの定番といえば怪盗だろう。カブトに参加したときも同僚にチームシャドウがいるのに怪盗シャドウを出したりもしたのだ。

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