フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:15、16話

 前回のダブル水落ちによる交換留学で双方のキャラの性格や見通しを掘り下げている。555は、こうした運やめぐりあわせによる邂逅や事件への遭遇が多いのだが、それは人物の心情に愚直なまでに誠実でありその人物の行動様式・性格を超えて事件や見知らぬ人物に会いに行くことはしないということだろう。その上で、偶発的に起きた事件事故に対しては人物のリアクションを描き掘り下げに利用している。

 前回木場のピンチに逃げてしまった海堂がなんとか彼を助けようと動き回る場面などがそうだろう。

 

  巧との交流を通して描かれた長田さんの善性。たっくんが戦うのを迷ったのはきっと、長田が人を殺めるところと人を助けるところ両方見たからだろう。彼女が人を助けるところだけを見たならば、長田だけが特例と割り切れたはずだ。しかし他のオルフェノク同様人を殺めるところも見てしまった。だから彼女の善性を認めつつも他のオルフェノクとの共通点も見出し、ひいては他のオルフェノクにも善良な心があるのではないかと考えを拡大していってしまう。

 そんな長田が発した「海堂を好きでいる自分で居たい」。人間の様に恋愛に夢見る生活に追落ち着きたいということだろうか。であるならば彼女は真に海堂が好きというより恋に恋している、そんなことができる平和な暮らしに根を下ろしたいという憧れなのだろうか。考えてみれば、オルフェノクとして覚醒してからスマブレとの接触、海堂のフォローと忙しい日々を送ってきた。ここでようやく彼女にも改めて身のふりを考える落ち着きが出てきたのだろう。

 人間だったころは日々の苦痛に耐えるだけで精一杯だった彼女に、オルフェノクになってからそういったものを考える余裕ができたのは何とも皮肉だ。オルフェノクになって失ったものが多い(と本人は認識している)木場と比較すると、少なくとも彼女を攻撃されるばかりだった境遇から多少なりとも自らを守れる状況になったといえる。オルフェノクになったことで他人を助ける力を得て、今後を考える余裕が出てきたというならば誰がオルフェノクの力を責められるだろうか。

 

  そんな彼女とのスタンスの違いが見受けられるのが木場だ。勇敢にもスマブレに立ち向かおうとする彼を後から追いかけてくる過去。「無理だよ俺には…」と吐露する彼の姿は悪のスマートブレインに立ち向かう勇敢な戦士から、怒りで人を殺めてしまった一人の人間に戻ってしまっている。もしかして彼はそんな過去を切り離し非日常の世界で戦う戦士として生きたいのではないだろうか。人を襲う怪物でありたくはないが、過去の人間臭い感情の発露から殺人に手を染めてしまったときにも戻りたくはないという板挟みなのではないだろうか。だとしたら日常に根を下ろしたい長田とは真逆だし彼女と人間観ですれ違うのもわかるというものだ。

 

 

 

 

 

 一方で人間サイド。オルフェノクとは知らずとも木場に辛辣な草加。木場は自らのコミュニティに属する存在ではないとはいえばれない自信があるのだろうか?それとも取り繕う気も起きないほどに単に木場とはウマが合わないことを感じているだけなのだろうか?そうだとするならば、草加という人間は印象以上に根は直情的で、感情で物事を決める人間なのかもしれない。「俺を好きにならない人間は邪魔だ」という名台詞には、案外権謀術数だけから言葉ではなく、純粋に己の心情から来ている部分もあるのかもしれない。

 

 また、草加オルフェノク人間性を気にしないのはやはり彼らの出自を知らないからか、それとも流星塾の件絡みで知っていて彼らについて何かを知っておりそれで嫌悪しているのか。謎は深まるばかりである。

 しかしそれはそれとして、菊池家にきて本性を表してからやりたい放題の草加は見ていて面白い領域だ。真理や啓太郎から見えない角度でほくそ笑むなど、やりたいことが明確な”草加節”はいっそ清々しくある。

 

 

 

 さて、そんな草加とついに直接対決にまで発展した巧。ただ、その事態にまで発展した経緯は少々複雑だ。

 巧は流星塾生ですら見抜けない草加が秘密を抱えている事実の存在に気付いている。その上、普段の草加の役者ぶりに手を焼いている。そんな相手にクレインオルフェノクの事情を話したところで聞き入れてもらえないどころか、事実を利用されクレインに危害が及ぶかもしれない。真理と啓太郎が丸め込まれて孤立無援の状態では自分が汚名を被るしかない。巧ならそんな自己犠牲的な選択を取り得るのはこれまでのエピソードを見れば明らかだろう。

 一方で草加も巧が唯一己の秘密を察しつつある状況にいる。他の奴らと違って巧は油断ならない、只者ではないと認識している。しかもファイズは自分の攻撃したのではなくあくまでクレインを助けたことをいの一番に察している。つまり草加側も巧に考えがあっての行動なのを知っている。それを踏まえてなおああいう行動に出ているのだ。

 この二人は互いに、「こいつには何か抱えているものがある」と踏まえてなお対立を選んだのだ。ただ、それを選ぶ理由だけが違っているのだ。

 

 

 ちなみに二人の対立の演出で面白いのが食事シーンだ。朝食の場面を見ると草加と巧は別メニューを食べている。もう少し突っ込んでみると、真理啓太郎草加が和食を食べているのに対し、巧だけがトーストを用意している。対立するにしてもうまく立ち回る草加と一人孤立する道を選ぶ巧の差が良く表れている。

 カイザを襲った巧を糾弾することに躊躇を見せる啓太郎。なんだか巧に対する信頼ができてきている。

 

 

 

ファイズ&オルフェノク

 クレインの使徒再生が初披露。鳥モチーフではあるが、翼が背中ではなく腰から生えている一工夫が見ていてフックになる。生まれついての鳥人ではなく人が後天的に得た力なので、跳躍や短時間の飛行はできても自由自在に飛べるところまでは至っていない。そんなバランスを感じさせるデザインだ。

 

 ゲストのフライングフィッシュはマンティスの流用スーツながら最小限のパーツでトビウオのヒレを表現しているのが面白い。木場やラキクロ並みに強いというわけではなさそうだが、武器を生成したりカイザからうまく逃げおおせるなどそこそこ戦いなれしてそう…という絶妙な強さを表現している。カイザとの殺陣の中では、草加の技巧者ぶりを引き立てる見事な斬られ役であると同時に、だが簡単には倒されず自身の能力を使って引き際を見定める見せ場も持っている。強すぎず弱すぎず、それでいてアクションも映える絶妙なゲスト怪人ではないだろうか。