フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:23,24話

 

 

 草加雅人の本性が描かれる回。彼の本性とは他人を陥れる権謀術数ではない。むしろそことは真逆で劇中人物の中でもかなり直情径行かつ激情家なところだ。頭に血が上ったときの向こう見ずさは、巧よりよほど上で有るくらいに見える。

 前回、真理が木場へ好意を持っているかもしれないの聞いたとき、その後の見通しも立てず、ただ居ても立っても居られない気持ちに突き動かされ彼に会いに行った。そして、目的もなく話が進まない草加と困り果てている木場。この二人の空気はラキクロが襲ってきてくれたおかげでなんとか有耶無耶にできたものの、このときの草加にいつもの狡猾さが無いのは明白だ。 

 木場がファイズについて誤解(とも言い切れない具合の解釈なのが厄介だが)していることを掴んだものの、この2話でそれを上手く利用できているとは言い難い。特になにかに利用するでもなく、ラキクロと共に木場を襲っている。

 今回真理に行った妄執じみた告白の内容も衝撃的だが、ここはあえてそのタイミングに着目したい。ここまでの草加のアプローチが効果を上げているようには見えない。そしてそれを草加雅人本人が自覚していないとは思えない。では何故、今回行動に出たのかというと、その直前に答えがある。村上や影山に自分の過去に触れられそうな場面がある。断片的な映像でしか語られないのが、彼の精神の不安定さをよく表している秀逸な演出であり、彼はいつもの嫌味な笑顔を見せる余裕もなく取り乱している。そして自分の中で暴れる恐怖・不安を押さえつける錨を失った勢いそのまま、衝動的に真理への告白に踏み切ってしまったというわけだ。

 また、今回ベルトが奪われたときに生身で真っ先に向かっていったのも草加雅人であることも注目ポイントだ。

 これらの描写から、草加雅人という人間の本性は権謀術数に長けた怜悧な男などではなく、むしろ激情家であることがわかる。

 

 

 そんな草加の異常な吐露にも真っ先に真意を探って気遣う巧の優しさ、懐の深さが際立つようになっている。あれだけ自分を陥れようとした草加へ積極的に話を伺おうとする。かつて、草加一郎との人違いエピソードで、草加雅人ととことんすれ違う真理に対し、やたら縁がある巧という描写があった。もしかしたら、本当に草加雅人を救えるのは乾巧なのかもしれない。当人同士(少なくとも草加の方)は決して認めないだろうが…

 

 

 オルフェノクサイドも様々な描写がある。ファイズへの憎しみを募らせる木場。今までファイズが同族や人間(と思っている)友人を襲い続け、敵愾心が積み上げられてきたところへ、それと同システムのカイザが自分を明確に攻撃してきたのだから、当人にしてみたらもはや決定的に思うのもやむなしだろう。

 今回、絶望をしていた小林を助ける海堂。真理絡みでろくでもない場面ばかり続いたが、ここで“根は良い人”のポジティブな面を見せてくれている。ただし、真理に対しても小林に対しても相手のことなどお構いなしに突き進むという点では同じなので、それは一つの要素がもつ複数の側面ということなのだろう。

 

 

 

 

 スマートブレインサイドから提示された情報である「ベルトはオルフェノクのためのもの」という設定だが、それと同時に人間が変身できる例外ケースもあることが示唆された。あの草加雅人が変身できるのだから、やはり変身可能条件は「優れた身体能力」などであり、たっくんもそれに該当するのであろう。

 では地下で実験しているオルフェノクはやはり村上派なのだろうか?それともこいつがその”王”なのであろうか…?

 

 今まではオルフェノクの中で木場たち穏健派や村上たち急進派といった派閥の争いが見られたが、今回は一つの派閥の中でも考え方の違いが浮き彫りになった。それは村上一派の中でも、組織人として功利を得ようとする村上と自らのプライドが最優先のラキクロの違いだ。琢磨影山がカイザを襲ったのは深い計算があったわけでなく「俺たちオルフェノクと対等ヅラなんて許さない」という感情によるものだ。ラキクロは名目上は村上の協力者であり命令系統にあるわけではないとはいえ、村上の目論見を完全に無視して自分たちのプライドを守ることを優先した。これに怒った村上は

いつもならバーに赴くところを、今回はラキクロを自分のオフィスに呼び出している。こうしたちょっとした行動でそのときの心情を表している資格表現も見事だ。

 

 

 

 最後に海堂たちがとんちのようなやり方でベルトを奪ったのも面白い。スマブレも巧側もベルトを公にして対外的に説明するわけにはいかない。だから、法的手段でとり返したりはできず互いに力ずくで奪い合うしかないわけだが、そこへ今回のようなやり方を持ってくるのは海堂のキャラ性の表現にもなっている。

 

 

 

555&オルフェノク

 

 今回登場したゲスト怪人の二体はどちらもモチーフの表現に一捻りが有って興味深い。ワームオルフェノクは土葬された遺体の中を進むミミズを表している。一方ラビットオルフェノクは比較的そのまま動物を乗せているが、ウサギはウサギでも耳のたれたロップイヤーを選んでいるのが個性的だ。前回のシーキューカンバーといい、モチーフの乗せ方が他のライダー怪人とは明らかに違うのが目を引く。

 

  ドラマ面では迷いや葛藤を見せる草加=カイザだが戦闘面においては逆に器用さを見せている。ファイズより遅れてラキクロと遭遇し交戦するわけだが、既にある程度対応できている。また、ホースオルフェノクとの咄嗟の連携もこなすあたり、(ベルトがうばわれるレベルのアクシデントでなければ)私情を一旦脇に置くことができることが伺える。

 

 ファイズとカイザといえば見事な連携のイメージだが、よくよく追って見ていくときちんと連携しだすのは20話を超えてからであり、それまでは別行動などによりタッグを組む場面などないのだ。草加が心の傷(と思しきもの)と妄執を巧に曝け出してから連携し始める形であり、ひとつの心情表現にもなっている。

 とはいえ、これで巧と草加が全面和解というわけには行かないであろうと思わせる“食わせ者”ぶりがこの番組の面白さである。