フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:5,6話

 この回を通して描かれることは、「父性の不在」ということなのかなと感じた。前回までの感想でオルフェノクがこれまでの平成ライダーよりも昭和ライダー怪人に近く、殺される側の心ある存在として濃密に描写されていることを述べた。

 では、逆に555が昭和ライダーから大きくかけ離れているところはどこだろう?それが前述の父性の不在だといえる。真理が父に会えない展開に加え、ライダーと怪人それぞれのサイドにいわゆる「おやっさん」ポジションと思しき人物が現れるものの、両者ともこの2話で物語から排除される。これまでの平成ライダーには(主役ライダーの戦いを関知はせずとも)彼らの日常の居場所となるおやっさんが存在していた。だが、ここで555はそれらを排除した。一つ、新たな破壊と創造を行ったのだ。

 またオルフェノクの目的が5話で早くも明かされる。目的探しに集中するのではなく、わかったうえでどうするのかを1年間突き付けていくのだろう。ここで明らかになった設定からわかることとして、オルフェノクとは吸血鬼+ゾンビのようなもの。人間関係や作劇が複雑化している分、怪人の設定は直感的にわかるものにしてバランスをとっているのだろう。情報量の調整が巧みだ。使徒再生は本能のようなものであり、知識がなくとも行える。だが、改めてそれを教えることでオルフェノクの互助組織の在り方と視聴者への説明を兼ねているのがうまい。

 これらの点から予想できるのは555とは子供たちが己の力で生き、時に右往左往し、己で進路を選んでいく物語なのだ。もちろんこれまでの仮面ライダーもその面は十分にあったが、555はメンターを完全に排除することで、悪い事態に進んだときはそれがより取り返しのつかない深みにはまったり、また逆に子供たちだけで助け合い立ち上がる強さを強調することが克明に描かれるのであろう。

 

 過去と積極的に決別し整理を付けようとする木場。対してそもそも未練がない長田。戸田が残した影響はオルフェノクとしての指針よりも、その死の在り方の方がだろう。木場や長田にとってはオルフェノクの死を見るのは初めてで自分たちが決して不死身の存在ではないことを知らしめられた。それが6話においてスネークオルフェノクを襲うファイズへの攻撃につながったのだろう。彼から見たら機械の鎧に身をまとうファイズこそ異形の戦士であるにもかかわらず立ち向かっていくのは木場なりのやさしさと勇敢さ、そして激情なのだろう。

 一転して、オルフェノクのなすべきことを教えられた後は自分たちがまだ人間として生きられることを強調する木場。自分を律しようとする理性と(自分で言った通り)後戻りできない状況・人を手にかけた現実の板挟みに悩まされている。

今回加わった海堂。自分の肉体の変化を恐れないのは良いが、危険と思しき相手に「やばいことしてる?」と直接問うなどかなりうかつな性格だ。

 

 一方ライダーサイド3人はこれまでの険悪さしかない状況から一転して少しずつお互いの良い面を見つけ始めたのが対照的だ。

 巧は免停に車上荒らしまでする現代のアウトロー。ただ、真理の父への面会に積極的に付き合ったり彼女の内心抱えてるものを見抜いたりと、感受性の高さがうかがえる。彼女に最後まで話させないのも彼なりの優しさだろう。真理が啓太郎に話したら話したで彼女が啓太郎に「同情するな」とくぎを刺した辺りからも、あえて聞かなかった判断の良さがうかがえる。まあ物言いで顰蹙を買うのが彼らしいが。それを補強するように喫茶店のマスターとのエピソードが語られるが、どうやら彼は面倒な問題で誰かが傷つくなら自分が悪者ということで終わらせればいいという性格のようだ。人と一緒に問題を試行錯誤・解決したことがないのだろうなとも思う。また、オルフェノクの出現よりもマスターの死に大きく動揺するところからも彼の性格がうかがえる。今回面白い演出として眼を引いたのが、外では啓太郎の語る夢に悪態をついている巧が車に乗り込んだ途端にその夢を立派だと称えるところ。車の中という密室は彼にとって本音を吐露できる境界線を越えたところなのだという良演出。

 また、啓太郎の両親の突飛な行動と夢を笑わない真理。これまで喧嘩ばかりしているがこういう所で彼女も好感が持てる。

 

 

 メル友という仮面でつながる啓太郎と長田。それのみならず、相手の1面だけを観測、接点ができていくライダーサイド3人とオルフェノクサイド3人。ろくでもない出会い方がいくつかあるが、これも巧真理啓太郎の様に少しずつ良い面を見ていくのだろう。そうであると思いたいが…。

 

ファイズ&オルフェノク

 今回対戦相手となったスクィッドオルフェノク。長い帽子とマントが、教授にも、子供たちをそそのかすハーメルンの笛吹き男のようにも見える。まさに戸田のポジションにふさわしい出で立ちだ。マントで攪乱したりその技巧の高さはこれまでのオルフェノクよりも実力をうかがわせるが、怒りのファイズのラフファイトで押し切られてしまった。狙った相手が悪かったとしか言いようがない。

 海堂が変化したスネークオルフェノクは蛇そのものというよりその頭骨を模したおもしろいデザイン。蛇の頭骨は様々な神経が通っているため正面から見ると孔だらけなのだ。エレファントやホースもそうだが、動物ヘッドをそのまま乗せた獣人ではなく、「動物の意匠の鎧を着た怪人」という出で立ちがオルフェノクデザインの面白いところだ。戦闘面でも武器や幻惑能力を使いこなしていたスクィッドと異なり肉弾戦しかしない点に彼の不慣れさを感じさせる。演出として気になるのが自分を襲ってきた殺人犯を、使徒再生ではなく腕力で返り討ちにして絶命させたところ。これはオルフェノクの力に酔っているとも、正当な反撃ともとれる微妙なラインだろう。まあその後向かってきた巧相手にからかうような動きをしている。だがしかし使徒再生という手段に出ないところを見るに、間違いなく楽しんではいるが命まではとろうとしていないという意思が見える。

 ライダー側で改めて強調されているのが、555ギアはベルトのみならず小物類に至るまですべて普段から実体として存在しており、手元に召喚したりといったことはできない。この面倒くささが555の特徴といっても過言ではないだろう。手元で実体化しないというリアルだが面倒な描写を1年間楽しんでいきたいところだ。