フラギイのメモ

Twitterで書き散らしたことを体系化しようとした。

仮面ライダー555感想:7,8話

 夢というものを起点に様々な生き方、見方が提示された回だと思う。「夢は呪い」「夢を持つと熱くなる」。当然だがどちらがさす夢も意味するのは同じもの。熱くなる希望に見えるか、呪いに見えるかは挫折という境界線によって別たれた立場の差でしかない。そこからわかるのは本作は具体的な職業描写を通して夢を語るのではない。それぞれの形は全く違うが、共通しているのはどしんと心の真ん中に居座りその人の人生に作用することだ。夢とは生きざま、ひいては仮面ライダーシリーズで守るべきものとされた「自由」の言い換えなのである。

 夢がもたらす相反する二つの要素をそれぞれ示す語り部を務めた巧と木場だが、それを別のスケールにも現れているかのように木場の中に多面性を見出すことができる。それは復讐者と守護者の両義性だ。彼は海堂に復讐するといいながらも自分は真相を聞きつけるや否や断罪者として教授の命を奪う。教授の卑劣な人間性は視聴者も十分に見ているため、感情移入ができる。だがそもそも彼が断罪者として動いてもいいのだろうか。別に速やかに警察に突き出すべきと潔癖なことを言いたいのではなく、例えば海堂に真相を教えて彼自身で報復する機会を与えることもできたはずだ。(勿論海堂の人柄なら応じないだろうが日が浅い木場にはそこまでわかるはずもない)

 他方、木場が海堂のように才能をつぶされる後輩が生まれるのを防いだという点では間違いなく守護者だ。海堂に真相を教えず一人で戦ったのも優しさといえる。海堂の指が治らず、真相を暴いたとしてもただ彼の心の傷を深めるだけだというならば、一人で戦おうというのだろう。こういった描写から木場の激情に身を任せる点と他人のために怒れる優しさを持つ点が見えてくる。

 意外なのがそもそも主要キャラの中で海堂が真っ先にわだかまりを解決したことだ。ライダー3人オルフェノク3人、クレジットやOPの扱いからしても、単純に考えれば巧木場・真理長田・啓太郎海堂の順に試練を解決していくように見えるがそう単純ではない。それは主要人物の中で最後に加わった海堂が最初から人の良さをわかりやすく見せてきているところだろう。音楽の指導中は柔らかくなる物腰や復讐するといいながらも誰にもオルフェノクの力を使わない点が見ていて微笑ましくなる。また曲の解釈について「生真面目ではなく馬鹿になれ」というなど地の頭は悪くない。

 一方で一筋縄ではいかない深さを一層見せてきているのが長田だ。スマブレには従いたくないが人を襲いたくないと名言もしない用心深さが印象深い。また、海堂の人間への情を見抜くなど他人の好意・嫌悪に敏感だ。彼女が今回教授の悪事を暴けたのも、教授の失言だけでなく彼女の勘が的確だったからだろう。

 

 オルフェノクサイドの怪しさとは対照的に明るい面を見せ始めたのがライダーサイドだ。特に今まで一番とげとげしく、親しみを感じにくい巧が本心に隠す人の良さを見せてきている。印象的なのが、前途多難さに挫けそうになっている真理のところへやってきて、彼女の八つ当たりと熱い料理でやけどしたことをあえて曖昧に混ぜて、彼女に八つ当たりの件を謝りやすくする気遣いだ。また、夢を持つ熱さは理解も共感もできないが、それを守ることはできると戦う。彼には夢の熱さなど受け売りに過ぎず全く実感などできないのだから、人命さえ守れれば他人の内心まで背負う必要はないはずだ。だが理解できないものまでをも守る。それが巧のやさしさだ。いつも通り真理に声をかけてから逃げるのを促すことで十分なのに、彼女が心配をして試験に差しさわりがないようにひっそりと戦っていることからも明らかだ

 ここまで見てて思ったが彼はよくオルフェノクを察知している。今回も啓太郎より先に方向を察知している。まあきっと正義感に篤いからだろうきっと。

 

 

 今回のゲストである、スマブレと関係なくオルフェノクの力を行使する教授。しかもただ使徒再生するのではなく、海堂に疑いの目が向くように行う周到さである。ここからもわかるように、本能由来の殺人やスマブレの下す強制・職務などに寄らなくとも個人の恨みや悪意でオルフェノクの力を運用できてしまう。スマートブレインの強制などなくともオルフェノクが殺人に目覚め、人を襲う。そしてそれは水面下に多数発生していることをうかがわせる。

 

ファイズ&オルフェノク

 ついにぶつかり合うファイズとホースオルフェノク。初めて破られた必殺キック。これまでスマートブレインによるエージェントでも耐えきることはできなかったクリムゾンスマッシュをまだ目覚めて日が浅い木場が防いだことからも彼の潜在能力の高さがうかがえる。剣1本で攻撃だけでなく防御もこなすことからも明らかだ。

 今回のゲストであるオウルオルフェノク。ガスマスクとフクロウの顔盤を合わせたデザインが秀逸だ。ガスマスクらしく(ガスマスクなのに?)煙幕を噴射しファイズの眼を眩ますのは闇に潜むフクロウのイメージにもあっている。

以前も述べたがオーソドックスな獣人スタイルはグロンギとアンノウンで多数秀逸なデザインが生まれた。そのあたりとの差別化や現代人の延長としての「動物の意匠が乗った服・鎧」をまとうという方向性が見事だ。

 ファイズの戦闘演出からもわかるが、グランインパクトは出が早いものの相手をとどめておけないのが弱点。しかしその次の戦いでは夢を守るために奮起し、拘束技を放つスパークルカットで攻める機転が見事である。

 他方、今回、少々ドジを踏んでしまったのがオートバジンだ。ファイズを助けるという目的は果たしたものの、危うく主人をハチの巣にするところだった。だが、そのことでファイズにどつかれてもマンティスファイズの時のような反撃はしないあたり、自分の誤射ということは自覚しているのだろう。真理の声で起動したところといい、色んな面で不安定・発展途上でまだまだ経験が必要なのだろう。